ミソジニーを「刷り込まない」ために

現在オンラインハラスメントに関する法律が改正されるなどの動きもあるが、まだまだ追いついていない現状だ。その動きをスピードアップさせるには、一人ひとりが声を上げることが大切だ。小さな声が集まれば、大きな声になるのだから。

たとえば今年2月には、森喜朗氏の女性差別発言にネット上で抗議の声が広がり、15万の署名が集まって世論と政治を動かした。私たち一人ひとりが声を上げることで、社会を変えられることを証明したのだ。

オギャーと生まれた瞬間からミソジニーな人間など存在しない。成長する過程のどこかで刷り込まれてしまうのだ。女性差別の強い社会ほど、ミソジニーの刷り込みは強くなる。

頑固にこびりついたミソジニーを「学び落とす」のは大変なので、まずは子どもに刷り込まないことが大切だ。

スウェーデンでは保育園からジェンダー教育や人権教育を徹底するという。世間やメディアに刷り込まれる前に、真っ白な状態で教えることによって、子どもたちは差別や偏見のない大人に育つ。

「すべての人間にはオギャーと生まれた瞬間から人権がある、差別されない権利がある」という当たり前すぎる教育を、日本はあまりにもしてこなかったんじゃないか。

また、子どもは周りの大人をお手本にして育つ。家庭での両親の関係から男尊女卑を学んでしまったり、親や先生のささいな言動から歪んだジェンダー観を学んでしまったりする。だから大人がまずジェンダーについて学ぶ必要がある。

拙著『モヤる言葉、ヤバイ人』『フェミニズムに出会って長生きしたくなった』では身近なジェンダー問題やアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)について書いているので、よかったら参考にしてほしい。

「男性優位社会」で生まれる性暴力

ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか』によると、海外の国々では包括的性教育が成果を上げている。

「愛情や親密性の育みを大事にする性教育によって、男の子たちは、楽しいセックスと健康的な恋愛関係は支配とコントロールではなく、敬意と双方の充足感から生まれるのだという意識をもつようになる」そうだ。

また『おうち性教育はじめます』によると、性教育を学ぶことは「性犯罪の被害者・加害者にならない」「低年齢の性体験・妊娠のリスクを回避できる」といったメリット以外にも「自分の性や体に対して肯定的に捉えられるようになって、自己肯定感の高い人間に育つ」「自分だけでなく相手も尊重できるから、幸せな人間関係を築く力の土台となる」など多くのメリットがあるそうだ。

性暴力加害者の再犯防止プログラムに携わる斉藤章佳氏は『男が痴漢になる理由』のなかで「(すべての性暴力は)そこに性欲の発動があったとしても、根底には必ず支配欲があります」と繰り返し「痴漢は、男性優位社会の産物です」と分析する。

「社会から男尊女卑の概念がなくならないかぎり、そこにある認知の歪みも是正されることはなく、性暴力加害者は再生産され続けます」

「『男性と女性は対等である』『女性を下位の存在として、支配してはいけない』という新たな価値観を自分の力で獲得していくのです。(略)男性がこうして学び直していかないと現代社会の秩序は守られません」