年金生活は残りの人生を縮小均衡にする

100歳を終点と考えたときに、まず重要になるのは、なんと言っても、「年金を受け取らない覚悟」をすることです。

たとえば、あなたがいま、45歳だったとして、「これから一生の間、月々30万円あげるからその代わりに仕事はいっさいしなくていいよ」と言われたとき、どう思うでしょうか。生活そのものには問題はないと思うでしょうか。

私だったら、趣味にお金をかけて、美味しいものを食べて、そこそこ旅行にも行って、人付き合いもして、なんてことを満足にやりたいと考えたら、ちょっと足りないなと思います。そして、それ以上の収入のポテンシャルがそもそもないのですから、30万円未満でなるべく暮らそうと、さまざまな面で縮小均衡になっていく可能性が高いのです。

つまり、年金生活とは、私たちがこの先、何らかのかたちでもっと社会的につながりを持ち、お金を得るためのオプションを放棄することを前提としたうえで、得られる生活にすぎません。

いま、早く仕事をやめて、年金生活になりたい、楽になりたいと思っている人は多いでしょう。しかし、それが本当に自分にとって幸せなことなのか、もう一度、考え直してほしいのです。

老後の「時間リッチ」「キャッシュリッチ」を達成する

私は、時間もお金も十分に手に入れた自由な生活のことを、「時間リッチ」「キャッシュリッチ」と呼んでいます。

勝間和代『健康もマネーも人生100年シフト! 勝間式ロジカル不老長寿』(宝島社)
勝間和代『健康もマネーも人生100年シフト! 勝間式ロジカル不老長寿』(宝島社)

年金生活になると、確かに時間リッチは達成できるのですが、キャッシュリッチは厳しくなります。繰り返しになりますが、年金生活でなぜケチくさく、お金に対して余裕がなくなってしまうのかというと、年金による収入が十分であるかないか、ということが大きな問題なのではありません。むしろ、いま得ている収入が今後、上昇する見込みがまったくないことが問題なのです。

私たちがいったい何に幸せを感じるのかというと、いまの幸せの絶対値に感じているのではなくて、これから先の未来において、現状がさらによくなる可能性があることに幸せを感じるものなのです。

ですから、年金生活のように、何らかのかたちで固定され閉塞的な状況に陥ってしまうのは、不幸せの大きなリスクになるわけです。

もちろん、いきなり月額報酬57万円以上を稼ぐのは、難しいことなのかもしれません。しかし、将来的には「年金が減る金額までは稼ぐぞ!」という心構えは重要です。

また、すべてのフロー収入を労働による収入だけで得ようとするのではなく、ある程度、リスクを分散させるためにも、資産からの配当を考えるべきです。

勝間 和代(かつま・かずよ)
経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授

1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガンを経て独立。少子化問題、若者の雇用問題、ワーク・ライフ・バランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を行う。著書に『勝間式食事ハック』(宝島社)、『勝間式超ロジカル家事』、『勝間式超コントロール思考』『ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理』(以上、アチーブメント出版)などがある。