3億円は30年でなくなる

個人事業を営んでいる人であれば、出費の多くを経費として使うことができますが、年金生活の場合、当たり前ですが経費算入はできません。

そうなってくると、自己投資のためにお金を使うとか、物を買って減価償却するとか、だんだんとやりづらくなっていくでしょう。文字通り、本当に縮小均衡なのです。

まだ、年金生活までいきませんが、50代半ばでアーリー・リタイアした友人たちを見ていると、資産総額に比べて、意外とお金の使い方は渋くなっているのです。何億円という資産を持っていたとしても、数千円や数万円を使うことに、昔に比べて、ずいぶんと躊躇するようになってきました。

それもそのはずで、自分が何歳まで生きるのか、正直わからないのですから、せっかく作った資産は、なるべく貯めたままにしておきたいというのが、人情というものでしょう。現在、仕事をしていないわけですから、資産は減る一方です。

当然、使い方もそれ相応のものになります。なるべく減らさないように、倹約的な生活になっていきます。たとえば、3億円を持っていたとしても、年に1000万円ずつ使っていれば、30年でなくなってしまうのです。無限にあると思えるような莫大な金額でさえ、お金は意外と儚いものなのです。

しかも、老後は、年金という収入が増えないのと同様に、フロー収入としてお金が入らない限り、資産は増えることなく、やはりただ減る一方なのです。

ゴールを100歳に設定せよ

第1回転載記事)では、長生きリスクの三大要素として、身体的、金銭的、社会的といった3つのリスクを挙げました。このリスクすべてを一度に補えるような魔法の手段があります。

それは、社会に貢献しながら収入を得続けること。すなわち、端的に言えば、「仕事」なのです。

仕事を満足に続けるためには、当然に健康にも気を使わなければなりません。もちろん、一日8時間を週5日、フルタイムで働く必要なんてまったくありません。テクノロジーの発達がめざましい今日では、うまくやりくりすれば、一日4時間労働くらいでも十分になるはずです。それくらいの労働時間で、年金が減額される月額収入以上の収入を得ることができるのか、真剣に考え抜くのです。

もし、40代、もしくは50代の人で、その見込みはないだろうと考えている人であっても、私たちは望むと望まざるとにかかわらず、100歳まで生きざるをえないような時代を生きています。いやでも、あと人生は50~60年も残っているわけです。

それは、昭和の頃の人生80年計画だった場合に、まさに社会人なりたての時期から数えた、残りの人生の年数とまったく同じです。人生の残り年数だけで考えた場合、社会人なりたての新人と同じような感覚で、生活設計に臨むことができるのではないでしょうか。

というか、そうしなければならない、と私は思います。

65歳をゴールとして、その後の35年間をひたすら、月々の年金やそれまで蓄えた多少の資産で暮らす。そんな状態だから、結局、公共の図書館かスポーツセンターなど、お金がかからず暇がつぶせるところに、高齢者が殺到することになるわけです。

そのような生活は、大変、窮屈で、不自由だと思いませんか。

私たちに定年があり、高齢者になるにしたがって、働かなくてよいとされるのは、その年齢になれば身体はしんどくなり、頭も衰えるから、というのが常識的な前提でした。しかし、こうした長生きにおける老化のリスク、つまり身体的リスクはお話ししたように、30~50代のうちから気を使って、意識的に予防法に取り組んでいれば、頭も身体も衰えないままで、70代、80代を迎えることは難しくないでしょう。

当たり前のようにお酒を飲んで、白米を食べて、65歳を仕事の終点と考えて人生設計をしている人が大半の世のなかで、本書を読んでいるみなさんは、ぜひ、お酒や白米を控え、100歳を終点とした人生設計に、いち早く頭を切り替えてほしいのです。