「先送りは困難」

○男女別定員制が継続されている現状では、これを緩和できる制度は間違いなく必要である。しかしながら、男女の合格最低点の差を完全に払拭できるものではなく、LGBTの観点からも本格的に議論を始める必要がある。先送りが困難な状況にあることは間違いない。
○男子、女子以外にも心と体の性が同一ではない生徒もいるため、単純に二つの性別で分けることは、これからの時代は適切ではない。男女別定員制自体、廃止すべきである。

このように、性別で分けられることをよしとしないLGBTへの配慮が必要だと答える中学校長もいる。

都立高校入試のジェンダー平等を求める弁護士の会は、東京都立高の男女別定員の廃止を求める意見書を6月28日に公表している。会は大学医学部の不正入試裁判の弁護団からの有志で構成されている。その1人である山崎新弁護士は、「あきらかに、法の下の平等を定めた憲法に反します。私立高校の定員を確保するために都立の定員を決めているようだが、他の都道府県でできている男女別定員の廃止を、東京都だけができないわけはない。進学機会の不平等の問題は、人権問題です」と語る。

「男女の定員なんて意味がない」と言えるのはいつの日か

このような問題は、都立入試に限らない。例えば、女性の管理職比率の向上や議員のクオータ制などの、女性の社会進出を促す制度も同様の問題は生じるだろうか、という疑問もわく。

残念ながら、女性の管理職比率は7%台にすぎず、2020年から2030年に先送りされた30%の数値目標からも果てしなく遠い。衆議院の女性議員割合も1割程度である。

男女の候補者の比率を半々に近づける「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」も施行された。これは長期的には、都立入試と同様に「女性の候補希望者が多すぎるために、男女比率を維持しようとすると、女性の希望者がなかなか候補になれない」「女性の議員数が上回ってしまう」と言われるような将来の到来が望まれるところだ。その時になったら初めて、「男女にこだわる定員なんて、意味がない」ということができるのではないだろうか。

そういう日の到来を待ちつつも、都立高校の男女別定員については、明らかに廃止の時期が来ていると思われる。

千田 有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授

1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人