子育て世代の男性の2〜3割が育休を取れば、社会は転換する
実はこれまで、育休という制度が会社にあるにもかかわらず、「隠れ育休」という形で有給を使っていた男性も多かったようです。ですが、育休は本来、会社が認める、認めないというものではありません。本来は労働者が取りたいと言ったらそれを拒む権利はないのです。でも、いまだに会社にお伺いを立てて「会社の迷惑にならないように」という誤った信念が形成されている。
おそらく大多数の人は、「うちの会社は男性が育休を取るような会社ではないから」と言われてしまえば、素直にしたがって、「せめて有給で」と考えてしまう。しかし有給を使って実質育休を取るというのは、企業側の逃げ道になってしまっています。制度があるなら、堂々と育休を使うべきなのです。
義務化された後も、しばらくは取りづらい雰囲気があると感じるかもしれません。でも、ある一定の数まで男性育休取得率が上がれば、今度は逆の同調圧力が働くはず。つまり、「男性も育休を取るのが普通」になるのです。権利を持つ人の2〜3割でも育休を取れば、大きく社会は転換すると思います。
権利行使なくして道は創れない 動き出せ男性育休世代
「自分たちの頃は、育児なんかで休まなかった」。そんな発言をする人も、きっといることでしょう。でも、そんなのは無視して休めばいいのです。凝り固まった考え方をする人たちに対して動くのではなく、男性育休を推進しようとする人と連携するほうが、結果的に会社のためにもなるのではないでしょうか。
権利行使なくして道は創れません。そもそも、有給も、8時間勤務も、土日が休みになったのも、全て労働者が戦って勝ち取ってきた結果ということを思い出してください。これらは最初から当たり前ではなかったのです。今から育休を取る世代が、男性育休第一世代。この世代が動けば、次の世代につながります。
子育て世代の部下を持つ管理職は、新しい社会を作る人たちに最後のバトンを渡せる立場にあるということを認識してください。部下にこんな制度があると教え、背中を押してあげること。それによってバトンを受け取った人が最後に走り出せるのです。
構成=樋口可奈子
1979年、東京都生まれ。99年慶應義塾大学総合政策学部入学。同大学卒業後、NPO法人「フローレンス」を起業し、代表理事に就任する。10年待機児童問題を解決するため、小規模保育サービス「おうち保育園」を開園。『「社会を変える」を仕事にする社会起業家という生き方』(英治出版)、『働き方革命』(ちくま新書)など著書は多数ある。