6月に育児・介護休業法改正法案が成立。これによって、男性はこれまでより育休が取得しやすくなると言われています。しかし最近は、育休を申請した男性が上司や同僚から「パタハラ(パタニティー・ハラスメント)」を受けるケースも。男性学の第一人者、田中俊之さんは「現在の日本社会においてパタハラが起きるのは当然の帰結」と指摘します――。
生まれたばかりの赤ちゃんの指
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利用しようとした男性の4人に1人が経験

今、育児参加に積極的な男性に対するパタハラが問題になっています。これは、育休などをとろうとする、またはとった男性に対する、上司や同僚による嫌がらせのことです。

具体的な例としては、男性社員が育休を申請すると「君が休むと他の社員に迷惑」「育児は女性がするもの」などと言って諦めさせようとする、育休明けに転勤や降格を命じるといったことが挙げられます。厚労省の調査では、育休を利用しようとした男性のおよそ4人に1人がパタハラを経験し、そうした経験者の半数近くは育休取得をあきらめていたことがわかりました。

男性上司が加害者であることが多い

パタハラは、特に男性上司が加害者になるケースが多いと言われています。なぜそうなるのか、ここでジェンダーの基本構造を考えてみましょう。

従来、日本では「男性=リードする側、女性=リードされる側」という意識が強い傾向にあります。プロポーズも家計も男性は「する側」「養う側」であり、女性は「される側」「養われる側」といった考え方ですね。

しかし、これが家事育児となると立場が逆転します。女性は男性や子どもを「世話する側」としてリードするよう求められ、多くの男性は一転して「世話される側」に回ります。このとき女性が提供する「世話」はほとんどが無償労働であり、大抵の場合は社会的評価につながりません。

一方、男性の多くは有償労働に就いていて、それがやりがいや社会的評価につながっています。有償労働に集中できるのは、家庭に世話する人がいてくれるからこそなのですが、そこに気づいている男性は多くはありません。食事の支度や育児、介護などは無償で提供されるものと捉えがちで、こうした思い込みはケアワーカーの低賃金にもつながっています。