脂肪燃焼体質をつくる“オイル”とは?
「代謝」とは、「体内で生じるエネルギー変換」のこと。摂取した食物は体内でエネルギーに変換されるが、「食事によるエネルギー摂取量」が「運動などによるエネルギー消費量」を上回ることが、体重増加の原因の一つとなる。また、エネルギーに変換されなかった糖質などは、脂質として体内に蓄積されてしまう。コロナ禍で運動によるエネルギー消費量が減っている今、体内の脂肪燃焼をサポートしてくれる食品として「MCTオイル」が注目されている。
「MCT」とは「Medium Chain Triglyceride(中鎖脂肪酸)」のことで、母乳や牛乳のほか、ココナッツなどのヤシ科植物に含まれる天然成分。オリーブオイルや菜種油、エゴマ油、アマニ油などは「LCT=Long Chain Triglyceride(長鎖脂肪酸)」であり、MCTオイルはLCTオイルに比べて酸化しにくく、体内ですばやく消化・吸収される。
「MCTオイルにはさまざまな健康効果があり、米国はもちろん日本でも50年以上前から未熟児・高齢者の栄養補給やてんかんの治療など、医療・介護分野で使われてきました。特に米国では1990年代以降、MCTに『脂肪燃焼作用』があることが判明してから、『非アルコール性脂肪肝』など肝臓治療の補助食品として使用されるほか、ダイエットにも活用されています」(中村医師)
そもそも人間の体を動かすための燃焼回路は、糖質をエネルギー源とする「糖燃焼回路」と、脂質をエネルギーとする「脂肪燃焼回路」の2つに大別される。ふだんは「糖燃焼回路」が優先的に働いて体を動かしているが、空腹時など体内の血糖を使い切ってしまったときだけ「脂肪燃焼回路」が働く。
「MCTオイルを摂取すると、体内のエネルギー産生工場『ミトコンドリア』を活性化させる『ケトン体』が生成され、『脂肪燃焼回路』のスイッチがオンに。すると『糖燃焼回路』と『脂肪燃焼回路』が同時に働いて効率よくエネルギーを燃やし、無理なく脂肪を燃焼しやすい体になるのです」(中村医師)
MCTオイルを効果的に摂取するには?
では、効果的に脂肪を燃焼させるためには、MCTオイルをどのように摂取したらよいのだろうか。整形外科医で漢方医でもある畠山昌樹医師は、「ファットアダプテーション」という食事法を提唱している。これは、食後のインスリンの分泌量を減らしつつ脂質を摂ることで、脂肪を燃焼しやすい体をつくる食事法だ。
「ファットアダプテーションのメリットは、筋肉の質を改善しながら脂肪を燃やすこと。具体的には、インスリンを分泌させる糖質を控えつつ、肉・魚介類などタンパク質や脂質を含む食材をしっかりと摂ったうえで油を摂取します。そして、油の中でも必ず摂取したいのがMCTオイルなのです」(畠山医師)
畠山医師は、朝食と昼食、そして睡眠前にMCTオイルを摂取する方法をすすめている。
「朝食では、MCTオイル15gを摂取。加えて、むくみを予防するカリウムが摂れるよう、果物が含まれていない野菜ジュースを飲みましょう。ジュースにMCTオイルを混ぜて飲むといいでしょう。さらに、DHAやカルニチン、マルチビタミンなど食事だけでは摂取できない栄養素をサプリメントで補って。昼食ではMCTオイル15gと、糖質量を15g以下に抑えた食事を。そして、夕食は炭水化物を控えたメニューにし、睡眠前にMCTオイル10gとアマニ油15gを摂取するのがおすすめです」(畠山医師)
夕食から翌日の朝食までの8~10時間は、体内にグリコーゲンがない状態。この間にMCTオイルを摂取することで、寝ている間に脂肪が燃える。さらに、アマニ油に含まれるα-リノレン酸には肌を美しくする作用があり、MCTオイルと一緒に摂ることで、きれいに痩せることができるという。
「ただし、MCTオイルは摂取しすぎると下痢を起こすことも。1回10~15gを目安にしてください。胃酸過多の人は気持ちが悪くなるケースもあるので、5gほどから始め、少しずつ量を増やして。まずは2週間この食事法を続けて、体重や体脂肪、体調の変化をチェックしましょう」(畠山医師)