メディア露出を増加させる「全教職員が広報員」の意識

「取材に応じてくれる教授を紹介してほしい」。大学の広報は、メディア側からそんな相談をされることもあります。気軽に相談してもらえるようになれば、それだけメディア露出のチャンスが増えます。

栗田朋一『新しい広報の教科書』(朝日新聞出版)
栗田朋一『新しい広報の教科書』(朝日新聞出版)

そこで2013年に作成したのが「コメンテーターガイド」です。教員の専門分野やコメント可能なことなどが一目でわかるガイドブックで、記者の皆さんに配っています。ウェブ版もつくっていて、誰でも検索できるようにしています。

このガイドによって、関西圏のメディアには「近大に頼めば、誰か手配してくれるだろう」ということが浸透したようで、かなり問い合わせがあります。「こんな人、いませんか」と漠然とした相談を受けることが多いので、広報室でもこのガイドを使って、検索しています。

相談を受けたときは、スピード対応も心がけています。特にテレビは「今日取材したい」という急な依頼が少なくありません。可能な範囲内ですが、休日や夜間でも対応するようにしています。

近大の教員は取材に協力的な人が多く、助かっています。その要因としては、「全教職員が広報員」という方針があること。学内のさまざまな会議の場で、学長が「広報に協力してほしい」と一言加えてくれることも大きいと思います。私たちも会議に参加して、メディア露出状況の報告をこまめにしています。

学校法人近畿大学

【法人概要・業務内容】
「実学教育」と「人格の陶冶とうや」を建学の精神に、1925年設立。医学から芸術まで14学部48学科を擁し、総合大学として日本最大級。2021年度一般入試ののべ志願者数が8年連続日本一。世界で初めて完全養殖に成功した「近大マグロ」をはじめとした先端研究でも知られる。2021年3月現在、附属幼稚園から大学院まで約5万2000人が在籍。

【広報体制】
広報室は14人(派遣職員含む)。さらに奈良や広島などのキャンパスや附属中高などに、広報の兼任担当者が約140人いる。

加藤公代さん
学校法人近畿大学入職後、学部事務部、人事部、入学センター等を経て、2013年から広報部課長。2017年4月から21年3月まで広報室長。現在は東京センター事務部長。

栗田 朋一(くりた・ともかず)
PRacademy代表取締役

1971年、埼玉県浦和市(現・さいたま市)生まれ。明治学院大学社会学部卒。歴史テーマパーク「日光江戸村」を運営する大新東で広報を担当し、江戸村及びグループ会社全体のコーポレートPRを手がける。2003年に電通パブリックリレーションズに入社。その後、07年にぐるなびに転職し、広報グループ長を務める。現在は、自身で立ち上げたPRacademyの代表取締役を務める。著書に、『現場の担当者2500人からナマで聞いた 広報のお悩み相談室』(朝日新聞出版)がある。