コロナ禍の今、行動が制限され、生きにくさを感じている人も多いだろう。特に人一倍多くのことを感じ取る「繊細さん」は、日々の感染状況のニュースを見て息苦しさを感じるかもしれない。こんな今だからこそ、自身も繊細さんであるHSP(Highly Sensitive Person)専門カウンセラーの武田友紀さんの考え方が一助になるのではないだろうか――。

※本稿は、武田友紀『雨でも晴れでも「繊細さん」』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

手でOKサイン
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

「まあ、いいか」と割り切る練習をする

「全然、頭が働かない……。」冬のある日、HSPを特集するテレビ番組に出演することになったのですが、収録を数日後にひかえて頭が働かず、ぼんやりしています。収録前はカウンセリングの予定を入れないからいいものの、元気が出ない。全く冴えない。しかし、原稿の締め切りは迫っている。「もうすぐ締め切りなのに、頭がぼーっとして原稿を書けない」と夫のつりーさんに訴えたら、「テレビがあるからじゃない?収録の前はいつもそうだよ。冬だから原稿の穫れ高が減るんだよ」と返されました。

「穫れ高って、農作物か。」まぁ、冬は活動量が減りますよね。20代の頃は季節なんて関係なく働き通しだったけど、「春夏秋冬、常にバリバリ働けます」なんて、生き物としておかしいんだろうなぁ。うーん、せめて朝日をあびよう。つりーさんがテレビ会議をしているリビングで、もそもそとお盆にマグカップとお茶碗を載せ、ベランダへ。太陽がぽかぽかとあたたかい。お白湯を飲み、胃に食べ物が入ると、気分も少しだけ晴れてきました。

しかし、テレビってこんなに緊張するものなのか。数日前から動けなくなるなんて、こんな極端な反応はもしかしてトラウマが関係しているのだろうか……。

いろいろ考えるけれど、なんにせよ頭が働きません。収録が終わるまでは諦めよう。テレビが終われば頭も動くだろう。

諦めて、収録までの数日間、YouTubeをみたりテーブルの食器を片付けたり、しいたけ占いを読んだりと、ぼんやり過ごしました。常にシャキシャキ働くべきだ、と思っていたらしんどいですが「あと3日は仕方ない」と思えば気もラクです。こうした割り切りが、何年も練習してようやくできるようになってきました。

すべてをベストな状態にもっていかず、ときには「うーん、まぁいいか」と進めていく。昔はこれが本当にできなくて、なにごとにも時間がかかりキャパオーバーしていたのですが、「まぁいいか」を練習することで、ベストじゃなくても物事は進むことがわかってきました。

塩梅を学んでいく

繊細さんたちから、たびたび「つい完璧にやろうとしちゃうんです」「手を抜いていいって言われても具体的にどうすればいいのかわからない」といったお話を伺います。意識せずとも先々のことまでよく考える繊細さんにとって、手の抜き方は後天的に学ぶスキルだと思うんです。

誰かが手を抜いているところをみて、「そのくらいでいいんだ」と真似して、塩梅を学んでいく。「手を抜く」という概念がまず必要だし、なにより「抜いてもまぁ大丈夫だろう、生きてはいけるだろう」という安心感がないと、手を抜くことは怖くてできないんですね。