危機的状況にある航空・鉄道各社は打つ手なし

コロナによる経済的打撃の大きさを象徴するのが運輸。特に航空業界のダメージは計りしれず、日本ではLCCのエアアジア・ジャパンが20年2月に破産手続きを開始した。

JALが4200億円、ANAが5050億円と莫大ばくだいな赤字で、いつどうなってもおかしくない。しかし、コロナ収束以外、抜本的な対策がありません」。飛行機は飛ばすだけで膨大な固定費がかかるため、徹底的なコストカットでしのぐしかない。財務状況はANAのほうが厳しい。「JALは経営破綻・再生で1度財務を整理したのが大きい。ANAは積極的に設備投資などを行ってきたぶん、負担が重くのしかかっています」

ようやく世界でワクチン接種がスタートし始めたが、国際線需要の回復はまだ遠い。国内線需要アップとなった「GoToトラベル」も、感染拡大の第3波による2度目の緊急事態宣言で停止となり、今は業績回復のカードが見当たらない。

乗務時間に応じた給与体系のパイロットや客室乗務員(CA)などの専門職は、大幅な減便で収入が大きく落ち込んでいる。「採用凍結、採用数の抑制、希望退職、賞与カットなどを行っていますが、コロナ後を考えると、人員整理も簡単ではありません」。どん底にある2社が、どこまで耐えられるのか。これ以上コロナが長引けば、経営統合しかないという声もある。

鉄道各社も大幅な赤字に転落している。外出自粛に加え、リモート勤務の定着で、人の移動が激減。「終電の繰り上げなどで減便を進めていますが、今後はさらにダイヤ、定期券や運賃全体の見直しがされていくでしょう」。JRグループで減収率がもっとも高いのがJR東海。東海道新幹線のビジネスユーザーの激減が大きく響いた。JR西日本、JR東海、JR九州では社員の一時帰休も実施している。

リモートワークやオンライン会議が定着した今、ビジネス移動がコロナ前に戻ることはないだろう。一刻も早い業績回復に加えて、働き方の変化に合わせた戦略の更新も重要だ。

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