同居の義両親は苦手な上司として接する

ただし義理の両親といっしょに住んでいる場合は、物理的な距離をとることが難しいので、ちょっとした工夫が必要になります。おすすめは相手の承認欲求を満たすこと。つまり、こちらから質問したり、教えを請うたりして、相手の存在を認めていることを表しましょう。苦手な上司への対応と似ています。

こちらから聞く内容は、料理や掃除のコツ、好きな食べ物や苦手な食べ物など、本当に日常生活のささいなこと。子育てや夫婦関係など人生の核になるようなことはNGです。おそらく自分とズレが生じて、そちらに合わせなければならなくなり、かえってストレスになる可能性があります。ですから、何でもないことをふつうに聞くのがいちばんです。相手は単純に自分に興味を持ってくれているんだなと思えて、関係性がスムーズになります。

2世帯同居でも一人の自由時間を勝ち取る方法

相手に「あなたのことを大事にしている」という気持ちが伝われば、「こういうことができないんです」「一人の時間がないとダメなタイプなんです」など、自分の弱いところも見せやすくなります。

実際、今の30~40代の女性は、主婦だったり、会社員だったり、いろいろな役割がありますので、いったんリセットする時間は必要です。とはいえ、自分から壁を立てて一人でリラックスするのは難しいので、まずは相手との関係をスムーズにしてから要求を伝える。「仕事も家事もしていて、ちょっとイライラするときがあるから30分ぐらいは自分の時間がほしいんです」と伝えて、部屋に閉じこもることは何もおかしなことではないというふうにしていければいいと思います。

上司への伝え方に似ていますが、少し違うのは許可をとりやすいところ。家族なのですから、さすがに上司よりはわがままを聞いてもらいやすいでしょうね。

テレワークが増えて、家で仕事をしていることに、納得がいかない上の世代の方はいます。パソコンでパチパチやっているのが、義両親には理解できなくて「本当に仕事をしているのか」「会社は大丈夫なのか」と、あれこれ干渉されるのが煩わしいという人もいます。しかし、こちらはしっかりと仕事をしているわけですから、多くの人がこういう働き方になって、社会全体が変わってきているということを、感情的にならずにちゃんと説明する。

理解の度合いは人によりますが、相手のわからないことを無理やりわからせようとして、こちらがヒートアップするのは無駄です。どうしてもわかってもらえない場合は、自分の仕事に集中するのがいちばんでしょうね。

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。