産業医の力を利用して会社の背中を押す

もし、今お伝えしたいろいろな手段を駆使しても、状況が変わらない、どうしても辛いという場合は、最後にもうワンアクション起こしてみましょう。ぜひ、産業医を一回挟んで会社に相談してみてください。

井上智介『ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)
井上智介『どうしようもなく仕事が「しんどい」あなたへ ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)

部署の異動や休職をしたくても、会社側と交渉するのって、けっこうハードルが高いですよね。そういう場合は、産業医を活用しましょう。

従業員の方が自分で、「あの人のせいで体調が悪いから部署を替えてほしい」と言っても、メンタルケアの知識が乏しい人からは「みんなそんなもんだよ」と、流されてしまうことがあります。

だから、間に産業医を挟むんです。

「今、この人は精神面で不調を抱えているので、医療面からすると、、○○や△△などの対処をされると良いですよ」という風に、第三者であり、なおかつ医療のプロである産業医に、会社の背中を押してもらうんです。

ただ、産業医の意見を会社は絶対に聞かないといけないわけではないです。あくまでもアドバイスなので、希望が100%通る保証はありません。

けれども、産業医目線で背中を押されたら、会社も動きやすくなると思います。

産業医がいない場合は精神科か心療内科で診断書を

「そもそも、うちの会社に産業医なんていたっけ?」という方もいらっしゃるかもしれません。

基本的に、従業員が50人以上の会社には産業医がいて、1カ月に1回くらいの頻度で訪問していることが多いです。私自身は現在、40社ほどを担当していて、それぞれの会社に月に一度の頻度で伺っています。

従業員が1000人以上の会社には、専属の産業医がいます。席も決まっていて、毎日その会社にいます。

いずれにしても、産業医とアポイントをとる場合は、総務や人事の方が産業医の日程を管理していることが多いので、その方を通して行うことになります。

産業医がいない場合は、精神科や心療内科で診断書をもらって、会社に体調が悪いことがわかるようにすればいいでしょう。

精神科と心療内科の違いは、ほとんどありませんが、学問的には若干異なります。精神科は、心を扱う科です。症状としては、不安、イライラ、気分が落ち込む、不眠、幻聴が聞こえるなど。

心療内科は、ストレスが原因で現れる体の症状を診る科です。症状としては、ストレスで動悸がする、吐き気がする、下痢が続くなど。

ただ、クリニックの名前だけでは、精神科なのか心療内科なのか、なかなか判断できません。患者さんが来院しやすいようにマイルドな表現にしているところが多いので、「井上精神科」ではなく「井上心療内科」という風に掲げていることがよくあります。どちらを受診してもほとんど同じなので、ご自身が行きやすいクリニックを選んでいただければと思います。