実際にどうやるかというと、図のようにPHASEを3つに分け、ターゲット層となる消費者を集めて、さまざまな角度から消費志向や潜在的なニーズをあぶりだすべく、ワークショップ形式ですすめていきます。今は、オンライン上でやっていますが、商品開発でも広告プロモーションでも踏む手順は同じです。
定性的に戦略を考えていくからといって定量データが必要ないわけではない。最終的には定量調査にかけてターゲット全体に当てはまるかを検証しますし、常に基礎的なデータは頭に入れておく必要があります。
例えば東京の感度の高い女子大生を集めてインスタグラムについて聞くと「大学生みんなやってます」という話になるんですが、全国のデータを見ると、13~29歳でインスタ使用率は5割ほど。「みんな」は言いすぎだとわかります。サンプル数が少ないので、常に定量データと照らし合わせることが必要です。
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▼数字を生かす3つのポイント
POINT 1:「仮説探索型」で調査する
定性調査をメインに、消費者を知ったうえで、段階的に仮説を立てていく「仮説探索型」が基本。仮説を立てて有効性を確認する「仮説検証型」だと、数字は単なる補強材料にしかならないことが多い。
POINT 2:実態調査の裏付けに利用
PHASE1で実態調査を行い、ある程度ターゲットペルソナを絞ったら、定量調査にかけて、ワークショップの参加者だけでなく、ターゲット層全般に当てはまることかどうかを検証していく。
POINT 3:基礎データを頭に入れておく
そもそも定性的に考える以上、サンプルが少ないことから、極端な意見が出やすいので、あらかじめ基礎的な定量データを頭に入れておく必要がある。定性と定量をきちんと行き来することが大切。
構成=池田純子 写真=Getty Images イラスト=鈴木勇介
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。