実際に買う人に聞けば答えがわかる!
私はこれまで数えきれないほどのマーケティングを見てきましたが、日本企業は消費者の心理に疎いケースが多いと感じます。グループインタビューなどにしても、自分たちで勝手に仮説を立て、それについて検証していく「仮説検証型」の手法がとても多いのです。特にメーカーは職人発想なので、高い技術を持っていてもオタクになってしまいがちです。このエンジン音がすごいとか、消費者にとってどうかは関係なく話が進んでしまいがち。定量調査についても、社内の上層部を説得するための補強材料としてのデータ収集が目的になってしまっています。
そもそも消費者について見識がない人間が、仮説を立てること自体に無理があります。私が、若者を中心に長年やってきたワークショップは、「仮説ゼロ」の段階から始まります。まずは定性調査で消費者の本音を知ったうえで「それならこうかな」と、そこで初めて仮説を立てる「仮説探索型」、要するに消費者に仮説を立ててもらうんです。実際に想定されるターゲット層が考えるのだから、圧倒的なリアリティーがあります。どんな商品なら買うか、実際に買う人にその答えを聞くのですから、売れないはずがないのです。
実際にどうやるかというと、図のようにPHASEを3つに分け、ターゲット層となる消費者を集めて、さまざまな角度から消費志向や潜在的なニーズをあぶりだすべく、ワークショップ形式ですすめていきます。今は、オンライン上でやっていますが、商品開発でも広告プロモーションでも踏む手順は同じです。
定性的に戦略を考えていくからといって定量データが必要ないわけではない。最終的には定量調査にかけてターゲット全体に当てはまるかを検証しますし、常に基礎的なデータは頭に入れておく必要があります。
例えば東京の感度の高い女子大生を集めてインスタグラムについて聞くと「大学生みんなやってます」という話になるんですが、全国のデータを見ると、13~29歳でインスタ使用率は5割ほど。「みんな」は言いすぎだとわかります。サンプル数が少ないので、常に定量データと照らし合わせることが必要です。
【テーマ】新しいヘアケア商品のキャッチコピーを作る
▼数字を生かす3つのポイント
POINT 1:「仮説探索型」で調査する
定性調査をメインに、消費者を知ったうえで、段階的に仮説を立てていく「仮説探索型」が基本。仮説を立てて有効性を確認する「仮説検証型」だと、数字は単なる補強材料にしかならないことが多い。
POINT 2:実態調査の裏付けに利用
PHASE1で実態調査を行い、ある程度ターゲットペルソナを絞ったら、定量調査にかけて、ワークショップの参加者だけでなく、ターゲット層全般に当てはまることかどうかを検証していく。
POINT 3:基礎データを頭に入れておく
そもそも定性的に考える以上、サンプルが少ないことから、極端な意見が出やすいので、あらかじめ基礎的な定量データを頭に入れておく必要がある。定性と定量をきちんと行き来することが大切。