男女ともに「男性=大黒柱」の感覚が根強い日本

——日本企業での勤務経験もおありですが、女性活躍についてはどんな印象をお持ちですか?

【サンドラ】私は女性らしさや男性らしさは否定しませんが、仕事は「男の仕事」「女の仕事」と分けるべきではないと思っています。やはり双方が肩を並べて、それぞれの能力を生かせる場所で同じように働ける環境を目指してほしいですね。

日本にはまだ「男性=大黒柱」という感覚が、男女ともに残っているように感じます。それに男性の中には、活躍している女性を指して「あいつは男だから」と言う人もいますよね。この言葉からは、「仕事で活躍できるのは男」という古い思い込みと、「俺はあいつを女として見ていない」というものすごくどうでもいいアピールが感じられて、本当に嫌な気持ちになります。

女性のことを「あいつは男」なんて言うべきではないし、そもそも女性として見ているかどうかなんて聞いていないのに。本当に、あの言葉はもう禁止にすべきだと思います。

現場体験を基に女性の生き方を発信していきたい

——今後はどんなテーマを取り上げていく予定でしょうか。

【サンドラ】マイノリティーにスポットを当てていきたいと思っています。私は日本と外国の両方にルーツがあるので、その視点から女性問題についても書いていきたいですね。私はドイツでも日本でも学校に通い、会社で働き、生活の現場を経験してきました。おかげで、観光客や駐在員の立場だったら見えない景色を見ることもできました。執筆の際は、やはりこの「現場体験」を大事にしていきたいです。

それと、フェミニズムにも興味がありますね。『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』は割とマイルドな内容ですが、今後は女性の生き方についてもう少し直接的な書き方をしてみたい。家族についても、親子の問題点や、国際結婚の盲点などについて書いてみたいと思っています。

日本の女性は、若さを求められたり家事育児をメインにした生き方を求められたりと、何かと圧が多いですよね。でもドイツにも自活して当然、パートナーがいて当然と違う形の圧があり、生き方に悩む女性も少なくありません。これからも両方の長所短所に目を向けながら、女性や家族、社会について発信していけたらと思います。

構成=辻村 洋子

サンドラ・ヘフェリン(Sandra Haefelin)
著述家・コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)、『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)など。新刊に『ドイツの女性はヒールを履かない~無理しない、ストレスから自由になる生き方』(自由国民社)がある。 ホームページ「ハーフを考えよう!