「制約」はイノベーションの源

ジムには通えない。でも体を動かしたい。そこで室内で使える運動器具とフィットネスを指導したりする動画を使った「おうちジム」。あるいは「おうちオフィス」。リモートワークに対応するため、家の一角に机や椅子を置き、仕事がしやすいように整える。「おうち学校」「おうち留学」はオンラインでの学習指導、「おうち病院」はオンライン診療など。

基本的にアイデアというのは、まったくの無から生まれるものではなく、関係のないもの同士を組み合わせたときに生まれます。すでにあるもの同士を組み合わせるだけでも、それが意外な組み合わせであれば、新しいものが生まれる。

しかしこれが、平常時にはなかなかできません。

「おうち外食って何? わざわざ家で作らなくても、レストランに食べに行けばいいじゃない」
「おうちオフィスなんて、仕事に集中できないでしょう」

と片付けられてしまう。

ところが今は、家にいなければならないという制約がある。この制約のおかげで、普段だったら「矛盾しているニーズってどこにあるんだろう」と探さなくてはいけなかったのが、そこらじゅうで見つかる。ということは、自然とイノベーションが生まれやすい環境にあるといえます。

多肉植物とカプチーノに、ステイホームの看板
写真=iStock.com/Christian Horz
※写真はイメージです

新しいものを定着させるには、“本家”を凌駕すること

矛盾した組み合わせを現実のものにするときのポイントは、元のものよりもいいものにするのがポイントです。

「これしかないから仕方なく」というものは、コロナが収束したら元に戻ってしまうでしょう。いっぽう、「これ、元のものより、よくなったじゃん」というものはコロナが終わっても続いていくと思います。

アメリカで大ヒットしている在宅フィットネスの「Peloton(ペロトン)」というものがあります。20万~30万円くらいで運動のマシンを買うと、ソフトウエアもついてくる。それをインターネットにつなぐと、普通はなかなか一対一対応してくれない人気のインストラクターの指導が受けられて、仲間も次々画面に出てくるので、世間話をしながら運動ができるというものです。

「いままでジムで黙々と運動してたのって何だったんだろうね」

というぐらい楽しい。コロナが終息してジムがオープンしても、「こっちのほうが楽しいから、これを続けます」ということになるのではないでしょうか。

いまは「密」を避けるために、「バーチャル学園祭」「バーチャル渋谷」「スマホで世界旅行」なども生み出されています。これも、リアル以上にどれだけ楽しくできるかが問われている。代替品では駄目で、それ以上のものを提供することが大事になってくるでしょう。