飛行機の扉が閉まる瞬間に立ち会うゲート責任者

城戸は昨年、コロナ禍がなければ、ステップアップできるはずだったという。外航の業務受託をしているグランドスタッフのスキルアップは、担当する外航によって若干の違いがあるものの、一般的には、チェックイン・到着・搭乗口業務→搭乗口の責任者→到着の業務の責任者→出発業務の責任者というルートをたどる。

城戸さんは、空いた時間でPCスキルの習得にも力を入れている。(写真提供=ANA)
城戸さんは、空いた時間でPCスキルの習得にも力を入れている。(写真提供=ANA)

現在の城戸はビジネスとファーストクラスのチェックインや便のエディット(座席管理等の事前調整)を主にやっており、まだ1番目のステップにいる状態だ。もしもコロナがなければ、昨年中に搭乗口の責任者の資格を獲得できるはずだった。

「ゲート(搭乗口)の業務は5~7人で担当しますが、飛行機の扉が閉まる瞬間を見られるのはゲートの責任者1人だけなんです。私はどうしてもゲートの責任者を経験したいので、いまの職場に残る選択をしました」

PBB(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ)の先端で飛行機のドアが閉まる瞬間に立ち会うことは、たしかに非日常的な、緊張感あふれる状況だろう。城戸はその光景がどうしても見たいというのだ。

接客業を極めたい

一方の坂井にも、明確な目標がある。CAのキャリアにも多くの段階があるが、現在の坂井は国際線のエコノミーのパーサーと国内線のチーフパーサーの両方の資格を持っている状態。まだまだ先がある。坂井が言う。

「客室乗務員は、最高のサービスを提供するための知識と経験を身に付ける必要があるため、日々勉強しています。私には接客業を極めたいという思いがあるので、ファーストクラスのパーサーの資格を取得したあとも、最高のサービスを追求し続けたいです。会社が多様な働き方を選択できるようにしてくれたので、例えば4月以降は8割勤務にして、2割は自分を磨くために使うといったことも考えています」

職務に強い憧れを持っていること、そして明確なスキルアップの階段の“途上”にいることが、ふたりの原動力になっている。

「とても厳しい状況ですが、精神状態を保つには、とくにかく動くことだと思います。動けば動いた分だけ、先が明るく照らされてきます。先輩の中に、4月以降はこんな働き方をしたいと話して下さる方がいるのですが、そういう方の話を聞くと、私もしっかり考え直そうと前向きな気持ちになれるのです」

この間、経営から社員への発信も増えている。城戸と坂井が異口同音にあげた“心に残る経営トップの言葉”は、「経営が続く限り、社員を守る」であった。

山田 清機(やまだ・せいき)
ノンフィクションライター

1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』(朝日文庫)、『東京湾岸畸人伝』『寿町のひとびと』(ともに朝日新聞出版)などがある。