信頼は組織ではなく個人に蓄積する
私は、人気商売ではなく学者をやっていますから、仕事をすれば蓄積していくことがありがたいですね。潰されそうになることは誰にだってありますが、どんなことをされても潰されないだけの実績が自分の中にあれば、必ずやっていけます。それは学生にいつも言っています。
誰が何と言おうと、私はこれをやりとげたというものがあれば、誰からも文句は言われません。潰されそうだと思ったら、潰されないだけの実績を作ることです。
会社の仕事では、なかなか「自分の実績がこれだ」と言いにくい部分もあるでしょう。
でも着実に目の前の仕事をこなしていれば、こいつにやらせればきっとこういうことをやってくれるという信頼が蓄積されていきます。そういう人間関係をつくっていれば、転職もしやすいんです。
組織を出ても生きていくには
私たちのNPOの活動もただの仲良しグループではありません。チームを組んでひとつの事業をやってきていますから、この人にこれを任せたらこれだけのことをやってくれるだろうと、お互いにわかってきます。そうすると、次もまたこの人と組もうというふうになるんです。どんな仕事でもそれは同じでしょう。
信頼がある相手なら、全然違う分野の仕事だったとしても、この人にこういうお題を与えたらこれだけのことをしてくれるだろうと思えます。
私は編集者にも恵まれました。畑違いのお題を持ってきて、これで踊れ、と言われる。無理だ、と言っても引き下がらない。おかげで自分のレパートリーが拡がりました。期待に応えたら、また次にも組もうと思ってもらえます。育ててもらった編集者には感謝してもしきれません。
仕事を通じて積み上げてきた信頼は、組織の内外で通用します。だからいざという時に無理が利いて、助けられたり、助けたりができるんです。
そういう人脈は、個人でつくるしかありません。人脈というのは、組織ではなくて、個人にしか帰属しません。それがあれば、組織を出ても生きていけます。
1948年、富山県生まれ。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学、ジェンダー研究のパイオニア。現在は高齢者の介護とケアの問題についても研究している。京都大学大学院博士課程修了後、平安女学院短期大学助教授、京都精華大学助教授、メキシコ大学院大学客員教授、コロンビア大学客員教授などを歴任。1994年、『近代家族の成立と終焉』(岩波書店)でサントリー学芸賞受賞。著書に、『家父長制と資本制』(岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女の子はどう生きるか』(岩波ジュニア新書)、『アンチ・アンチエイジングの思想』(みすず書房)など多数。
