給与削減無しの完全週休3日制を目指すべき

本来目指すべきは給与削減なしの完全週休3日の実現だろう。かつて週休1日から2日への流れを作ったのは松下電器産業(現パナソニック)など大企業だ。それを受けて1987年に労働基準法が改正され、労働時間は「1日8時間、週48時間以内」から「1日8時間、週40時間以内」に変わり、移行措置を経て1997年に完全週休2日制が実現した。

週休3日制は過去に何度も話題になったが、日本企業の長時間労働体質や商慣行から困難と指摘されてきた。しかし、折しも働き方改革の浸透やコロナ下のテレワークなどによって残業時間は全体として減少傾向にある。また、AIなどデジタル技術の活用で業務の効率化も進みつつある。たとえばIT企業のネクストビーチは20年4月からマネージャー相当のエンジニアを対象に給与変更なしの週休3日制を導入している。

週40時間労働は長すぎる

また、労働時間の1日8時間、週40時間も見直すべき時期にきている。先進国の労働時間は短縮の方向にあり、EUの週の平均労働時間は36.2時間(2019年)。ドイツは34.2時間にまで減少している。そのドイツ最大の労働組合であるIGメタルは、20年8月以降、政府・金属産業界に対して、新型コロナウイルスの危機と自動車産業の構造変化による経済的影響から雇用を確保するために給与削減なしの「週4日」の労働時間短縮の交渉を要求している。

1日の労働時間が短い上に、さらに週休3日の要求は日本よりはるか先を目指している。日本で完全週休3日を実現しようとすれば1日8時間×4日、つまり、1週間の法定労働時間を32時間にすれば可能だ。フランスの週35時間の法定労働時間に近い。日本でも企業の中には実現可能な企業もある。

たとえば日本生命、東京海上日動をはじめとする生・損保会社など1日の所定労働時間が7時間という会社も少なくない。1週間の所定労働時間は35時間であり、こうした企業が3時間減らすだけで週休3日制も可能になる。先進企業がリードする形で週休3日制を徐々に浸透させていくことが必要ではないだろうか。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。