今後も率直な発言を求む

全身に染み込んだジェンダー観を変えるのは難しいものです。それでも僕たちは、どうしたら女性差別が根付いた社会を変えられるか考えていかなければなりません。そのためには、まず差別的な発言をしてしまう人の論理や感覚をしっかり理解する必要があります。

現状を知り、分析し、問題を解決していく──。このステップを踏むためにも、僕は森氏には今後も率直に発言してほしいと思っています。もちろん辞任は当然の結果ですが。

発言を責めるのは簡単です。今の時代なら「失言が多いから」「こちらが正義だから」と黙らせることもできるでしょう。しかし、それは問題の根本的解決を遠ざけます。

「どうすれば同じような男性を変えられるか」考える材料

女性を当然のように見下す姿勢はどうつくられてきたのか、彼らはどんな世界を生きているのか、どうすればそうした男性を変えられるのか。森氏の発言をきっかけに、この3点をあらためて考えるべきだと思います。

この社会には他にも同じ考え方の男性がいて、そういう人たちに対処していかざるを得ない人もたくさんいます。適切な対処方法を探る上でも、森氏の論理や感覚はもっと知っておかなければ。今の段階で沈黙されてしまうとそこが果たせないので、森会長には引き続き発言の場が与えられるよう期待しています。

構成=辻村 洋子

田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。