データや客観的事実を示しても動かない
森氏の場合を例にとって考えてみると、女性のほうが、男性より話が長いというデータはない、むしろ現実は逆で、男性の話のほうが長いというデータがあると、客観的事実を示せばいいのではと思うかもしれません。
しかし、こうした説得は本人には通じないでしょう。彼らは客観的データより自分の世界のほうを重視する傾向があるので、「(データ的にはそうかもしれないが)俺はそう思わない」で終わる可能性が高いと思います。森氏も、記者会見で記者にエビデンスを求められた時、何を言われているのかわかっていないように見受けられました。
そもそも森氏のような男性は、記者なども含め、自分が下に見ている人の説得は受け入れません。相手を個々の人格として見ていないので、こちらがどんなに言葉を尽くしても心に届くことはないと思います。ところが、これが家族や親友、側近となると話は違ってきます。
家族や側近からの指摘が効く
自分が信頼を寄せている相手、個人として見ている相手が「それはおかしいよ」と言えば、理解できるかどうかは別として、理解しようという気にはなる可能性があります。森氏の場合は家族に怒られたそうですから、今は自分の発言の何がまずかったのか、もしかしたら少しわかっているかもしれません。
同じように、会社に女性を下に見がちな上司がいたら、本人が信頼している相手から説得してもらうのがいいと思います。ただ、ある程度上の地位にいる男性は、同年代の友人が少ない傾向があります。偉くなると周囲が間違いを指摘してくれなくなりますから、そういう時こそ友人の出番なのにそれもいない。
その意味で、組織の中で上位にいる人は、「自分だけ別世界を生きていないか」を確かめるすべを持っておくべきでしょう。特に男性には、間違いを指摘してくれる人がいないことを「怖い」と思う感覚を持っておいてほしいと思います。