不要PCやスマホが、国内の難民雇用促進と子どもの教育支援に
ピープルポート
横浜市のピープルポートでは、不要になったパソコンやスマートフォンを無料回収し、リユースできるものは最新のソフトを入れて中古販売、できないものはパーツごとに分けてリサイクル資源にする事業を展開している。一般的な家電リサイクル業者と違うのは、9人いる従業員のうち2人が日本で難民申請中の外国人という点だ。
代表の青山明弘さんは「社会問題をビジネスで解決する。」を理念に掲げる企業、ボーダレス・ジャパンに新卒で入社し、「日本で難民申請をして不安な日々を過ごしている人たちが安心して働ける場所をつくりたい」と、同グループの子会社としてピープルポートを創業した。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2019年末時点で、地球上の97人に1人に値する7950万人が、紛争や迫害で故郷を追われている。一方、同年度の1年間に日本で難民申請をした外国人は1万人以上にのぼるものの、認定者は44人と驚くほど少ない。
「申請者は出入国在留管理局で面接を受けます。避難することになった状況を詳細に伝え、自分に命の危険があることを証明するための書類を日本語訳付きで提出し、結果が出るまでに平均で3~6年、長い人で10年かかります。申請中は6カ月ごとにビザの更新が必要になります」
ビザの期限内に難民申請ができず、不法滞在となってしまったり、難民申請結果が不認定で再審査も認められなかった場合、強制送還されることもある。また、本人がこれをかたくなに拒否した場合は、入管施設に収容されることもある。
青山さんによると、申請期間中に日本人と結婚して日本国籍の子どもがいても、長期収容されるケースがあるという。さらに、国から働く許可を得ていたとしても、日本語が話せないために条件の悪い仕事にしかつけないなど、経済的貧困と社会的孤立ものしかかる。
難民が能力を発揮しやすく、安心して働ける事業とは?
ビジネスが先ではなく、助けたい対象があって、その問題を解決するためにビジネスを考える、それがボーダレスグループの事業のつくり方だ。そこで「日本語の壁を感じずに、彼らが能力を発揮できる仕事を考えたとき、システムが英数字や英語表記で比較的スキルの習得が早い電子機器の修理やメンテナンス事業にいきつきました」。日本社会に慣れてもらうため、日本語学習や不動産賃貸契約などのサポートも行う。
ピープルポートが難民問題に加えて力を入れるのが、電子機器の引き取り価格分(ノートPC1台250円、スマホ1台100円)の寄付だ。貧困や虐待によって教育機会や居場所を失っている子どもたちをサポートする、3つの団体を選定している。
「難民申請中の方の多くは他者貢献意識が強いんです。そこで利益の一部を日本の宝である子どもたちを支援する活動に還元して、難民申請中の人たちの仕事が日本社会にも貢献する仕組みをとっています」
今後は難民申請中の外国人の雇用を100人に増やし、個々の能力が発揮できるよう業態を広げ、海外展開も視野に入れる予定だ。