髪の毛が、頭髪を持たない子どもたちのウィッグに
Japan Hair Donation & Charity
特定非営利活動法人(NPO法人)通称:ジャーダック(JHD&C)
病気やけがなどで頭髪に悩みを抱える18歳以下の子どもたちに、寄付された人毛だけで作ったウィッグを無償提供する活動を行うJapan Hair Donation & Charity(以下、ジャーダック)。代表の渡辺貴一さんは、25年前にニューヨークで美容師をしていた頃、髪の毛を寄付する「ヘアドネーション」を知った。帰国後に共同経営者と美容院を始める際、「美容師ならではの社会貢献ができないか」と考え、2009年に日本で初めてヘアドネーションによる子ども向け医療用ウィッグを提供するNPOの設立に行き着いたという。
寄付の流れはこうだ。まず髪の毛の提供者(ドナー)は、ホームページに掲載されている注意事項を美容師に伝え、カットした髪の毛をジャーダックに送る。ジャーダックではそれを長さ別に分け、ある程度まとまったら専門業者に送り、工場で髪質・髪色を均一にするトリートメント処理が施され、ウィッグ用の髪の毛ができあがる。
ウィッグの提供希望者(レシピエント)は頭の型取りを行い、後日頭のサイズに合ったウィッグを受け取る。それを美容院に持って行き、自分の好みの髪形に整えてもらう。消耗品のため、申し込みは19歳になる前日まで、何度でもできる。
1つのウィッグに必要なのは50~100人分の髪の毛
ヘアドネーションを行う団体は複数あり、集めている髪の毛の長さや質は団体ごとに規定が違う。ジャーダックへ寄付する髪の毛は、白髪やカラー、パーマなどをしていても問題ない。ただし、長さは国際規格と同じ、「31cm以上」としている。
「髪の毛の折り返し部分を考えると31cmで、ぎりぎりボブスタイルのウィッグができるくらいの長さ。だからそれ以下の長さは受け付けていません」(渡辺さん、以下同)
髪の毛は抜けては生えてを繰り返すため、カットした髪すべてが同じ長さではなく、約50~100人分で1つのウィッグができると渡辺さん。しかし、「多くのレシピエントが憧れるのは、やはりロングヘアなんです。ロングのウィッグには60cm以上の長さが必要です。長い束ほど短い髪の毛も多く含まれているので、ウィッグにするには、より多くの人の髪の毛が必要になってきます」
さらに、ドナー側は自分の髪形も考慮しておく必要がある。どんな髪形を希望し、その髪形にするにはどの程度の長さが必要か、美容師と事前に相談しておくと間違いが少ない。「一気に短くするわけですから、美容師にはかなりの力量がいります。ドナーの髪質や好みを熟知している美容師に、相談することをお勧めします」
子ども向けのウィッグは既製品が少なく、頭にフィットするセミオーダーのウィッグの価格は約30万~40万円と高額だ。さらに、成長により頭のサイズも変わるため、新調していく必要もある。「ウィッグと気づかれにくい人毛ウイッグで、自分らしくファッションを楽しんでもらいたい」。その思いのもと、設立以降提供したウィッグは449個に及ぶが、20年7月6日現在、430人が提供を待っている状況だ。