精神的安定も得られる宿泊施設付き「アンドセンター」
「大阪には自治体が運営する自立支援センターがありますが、寮は8人一部屋です。東京は貧困ビジネスがはびこっていて、ベニヤ板で仕切っただけの共同部屋でカップ麺を支給され、生活保護費のほとんどをとられてしまうような民間施設を行政から案内されることもあります。ホームレス問題には自己責任論が根強く、当事者の気持ちに寄り添った支援になっていません」
チャンスがあれば再起したいという人たちの大きな壁は「定職と住居がない」ことだ。大阪では住居がなければ生活保護を利用させてもらえないが、仕事がなければ家を借りられないことがほとんどだ。そこで同法人では、行政、企業、不動産業者とネットワークを組んでいる。そして、路上生活者に向けた夜回り活動、宿泊もできる生活応援施設「アンドセンター」へ相談に来た人へのだんらんスペース・シャワー・洗濯機・仮眠スペースや宿泊施設の無料提供、就職先相談、健康診断、居宅移行支援や就労定着支援など、相談者の状況に合わせたサポートを徹底して行っている。例えば就労支援の柱の1つ、「HUBchari」は、ドコモ・バイクシェアと提携したシェアサイクルで、路上生活者の多くが自転車修理ができることに着目して生まれた。事業の収入はすべて、働く元相談者たちの人件費や、路上生活者支援活動費に充てられる。
20年のコロナ禍では、派遣切りをされた相談者が急増し、4月だけで105人と、前年度の3倍近い数に達した。「そもそも相談者の数は年々増加しています。19年度は前年比2.4倍の約750人でした」
そのうち、女性の相談者は約22%。多くは、虐待やDVから逃げてきたり、精神的な病を抱え無収入になったという人々だ。路上生活するよりはマシと水商売に進んでしまう女性も多いなか、18年に無料宿泊施設ができたことで、相談者が増加したという。「誰もが人生のセーフティーネットからこぼれ落ちないように」。川口さんたちの挑戦は続く。