男性中心、24時間勤務が当たり前の職場。だが、母になっても、せっかく手に入れたキャリアをあきらめたくない、仕事を続けたいという強い思いで会社と交渉。新しい働き方を開拓した。

女性運転士の仕事愛がかなえた短時間勤務体制

「終点の新宿駅に到着してブレーキをかけ、お客様が降車された時『やった』と思いほっとします。小田原~新宿間の1時間半を無事故で時刻表どおりに運行できたことに、毎回深い達成感を感じるんです」

運転士 大中佐智子さん
運転士 大中佐智子さん

高校時代から憧れ続けた電車の運転士をめざし、大中佐智子さんが小田急電鉄に入社したのは、専門職として車掌や運転士などの女性乗務員募集が始まった3期目だった。女性の先輩は5人、運転士見習いまで進んだ女性がやっと1人の時代だ。

「入社後数カ月はまず駅員の仕事をします。最初の勤務地は新宿駅。初めて見たラッシュにはびっくりしました。乗務員志望なので、男性同期と同じようにホームに立ちたいのに、新人女性の担当は窓口業務。後に経験できるのですが、そのときは男性に負けたくないという焦りから、同期や先輩に必死でアピールし、ホームでの業務を見学させてもらったりしました」