医学生の3割が女子という時代。働き方改革を迫られる大学病院でキャリア教育を担う医師は、育休なしのフルタイム勤務と子育てを両立した、先駆的女性ドクターだった。

女性医師受難の時代、あえて超男社会の診療科を渡り歩く

かつて大学病院の勤務医は、フルタイムで働き、当直もこなして当たり前。女性医師は妊娠すると退職か、産休から戻っても非常勤になるのが常だった。そんな二十数年前、勤務していた病院で、育休も取らず、フルタイムで復帰した数少ない女性医師が岡崎史子さんだ。

東京慈恵会医科大学 医師 岡崎史子さん
東京慈恵会医科大学 医師 岡崎史子さん

「夜中に呼び出されて、ベビーカーを押しながら出勤したこともありました。病棟での診療を終えて医局に戻ったら、同僚の医師が息子をあやしてくれていました。周囲に理解があったのが幸いでしたね」

外科医の父に憧れて医大に進学し、研修医として当時、超がつく男社会だった外科に進んだ。

「休みの日でも呼び出されると病院に行き、患者さんに寄り添う父を尊敬していました。いざ外科の医局に入ってみると診療や手術のほか、ペーパーワークも忙しく、当直もあり、男性と同じように働くのは体力的に大変。先輩医師に『両乳房を切除して子宮を取ってから来い』と言われ『負けるもんか!』と気合を入れたのを覚えています。厳しい2年間でしたが、必死でやり抜きました」