世界四大宗教を知る
世界の四大宗教の成り立ちや現状を客観的に学び、相互理解を深めたうえで、これからの宗教を考えよう。
信仰により死後、罪からの解放をめざす
キリスト教
● 三位一体(父なる神、子なるイエス・キリスト、聖霊)
● 信者数:約24.5億人
● 開祖:イエス・キリスト(前4年ごろ~後30年ごろ)
● 教典:聖書
ユダヤ教、イスラム教のような宗教法がないキリスト教
キリスト教は、ユダヤ教のなかから生まれた宗教です。イエス・キリストはユダヤ人であり、その使徒となった人物たちもみなユダヤ人です。だから、原始的なキリスト教にはユダヤ教の改革運動としての性格があり、必ずしも独自性をもってはいませんでした。
キリスト教がユダヤ教の枠を脱するのは、イエスの死後にイエスを救世主として信仰するようになる伝道者のパウロが、その信仰をユダヤ人以外の人々に伝えるようになってからです。その布教活動をとおしてキリスト教は民族宗教の枠を脱し、ローマ帝国全体、さらには世界宗教へと発展していくことになります。
同じく一神教であるユダヤ教やイスラム教と比べて、キリスト教には大きな違いがあります。それは日常生活を律する宗教法がほとんどないことです。この特徴はローマ帝国の統治のあり方と関係しています。
ローマ帝国では紀元前5世紀中ごろから「ローマ法」が成立し、世俗社会を律する法律として機能していました。そのために、キリスト教という宗教が広まっていく段階では、世俗の世界を支配するような宗教法が必要とされなかったのです。
キリスト教の教義には、人間は罪深い生き物であるという「原罪」の観念があります。これは旧約聖書に出てくるアダムとイブの物語をもとにしたものですが、同様の物語を共有するユダヤ教やイスラム教には、原罪という考え方はありません。罪深い人間を救うことができるのは神の代理機関であるカトリック教会だけです。こうした教義が教会に絶対的な権力を与えることになりました。
16世紀に登場するプロテスタントは、教会の権力を否定して、聖書中心主義の立場を打ち出します。神と人とを媒介する組織を認めない点で、プロテスタントとイスラム教は似たもの同士なのです。