先進国ではいま、「宗教消滅」という事態が進行しつつある。人生100年時代を迎え、死生観が大きく転換するなか、四大宗教はどこへ向かい、これからの宗教には何が求められるのだろうか?

宗教はいつ、どのように始まったのか

Faith ドア
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地球上にある民族や社会のなかで、宗教がまったく存在しない場所は一カ所も発見されていません。宗教は人類の誕生とともに生まれ、人類と同じだけ歴史を重ねてきた。このように言うこともあながち間違いではありません。

ただ、宗教の起源を求めるのは簡単ではありません。

一般的には、時代をさかのぼればさかのぼるほど、人類は呪術的な信仰に支配されていたという考えが強いと思います。初期の人類ほど呪術的で、文明が発展するにつれてだんだんと理性的になっていく。人類は次第に迷信のようなものにとらわれなくなっていったというように、ふつうは考えがち。

たとえば縄文時代の遺跡が発掘されると、当時の建物として立派な神殿を復元したり、縄文土器や土偶の装飾に超自然的な存在を読み込んだりします。

しかし、私はそこに疑問を持っています。最初期の人類が呪術的・宗教的であったことを明確に証明する資料を探し出すことは非常に難しいからです。

実際、日本でも、呪術的な信仰が民衆のなかに広まっていくのは、平安時代に入って密教への信仰が流行してからのことであり、世界のほかの宗教を見ても、神秘的な力に対する信仰が発達するのは、文明が発達してからのことです。

ちょうどいま、私たちはコロナ禍のさなかにいますが、疫病もまた宗教をつくりあげるうえで、大きな役割を果たしてきました。