農業の未来はさらに明るくなる

コロナによって、私は元々有望視していた農業についてさらにポジティブになった。多くの先進国ですでにそうなのだが、たとえばアメリカではアメリカ人の農業従事者の後継者が少ないため移民たちが畑を耕している。そして、ヨーロッパの多くの国も同じような状況である。しかしコロナの影響で国が閉ざされていき、移民の出入りが限られる中、農業の規模はさらに限定されてしまい、今後、農作物価格は上がると予想する。

現在、砂糖の価格は最高値から80%も下がっている。高値からここまで下がっている資産は他にあるだろうか。

そして金融市場を見る限り、大半の資産は一度下がっても高値に戻る傾向がある。それが100年後になるかもしれないが、いずれ上がるだろう。たとえば綿の価格は一度、0.5セントから1ドル20セントまで高騰した。その100年後には綿は再び高値を更新したが、相当な時間がかかった。

農業で大儲けしたければまずは自分が農家になるべきだ。特に日本では地方にたくさんの土地があると聞いている。人口は大都市に一極集中しており、地方の土地価格は下落している。コロナで少しは地方に移動する人が増えるかもしれないが、とにかく田舎で畑を耕す人が必要なのだ。思い切って農場を買えばいい。そして、そこで働いてくれる人材は外国人労働者がいいのだが、コロナで外国人の出入りはしばらく制限されるだろうから、まずは元気な壮年期の日本人に来てもらうのもいいかもしれない。最近の60代以上は、昔に比べると若く、元気も気力も有り余っているのだから、定年後に第二の人生を農業で見出してもらえばいいと思う。

農家は世界的に不足状態

私の本の読者で農家になった日本人がいるようだが、彼は私の著書を読んで、将来インフレがやってくると考え、脱サラをして農家になることを決心したようだ。日本の農業従事者の平均年齢は67歳(2019年時点)と非常に高い。日本だけでなく、欧米でも同じような状況が見られる。

世界的に見ても農業に関心を持つ人は少ない。アメリカでは農業より広報やPRの勉強をする人たちの方がはるかに多く、誰も農家にはなりたがらない。問題は、世界の人口ピラミッドが高齢化しているために、将来的にもっと農業従事者が足りなくなることだ。

日本は農業分野で技能実習生の外国人を受け入れるようになっているが、その数はまだ限定的だ。人手不足を解消するような量とは言えない。日本が得意なロボット技術をもっと活用すればよいだろう。

ロボット、ドローン、AIなどの最新テクノロジーを活用して、農業にイノベーションを起こせば、日本にとってのビジネスチャンスは大きくなる。将来、農家で働く者がランボルギーニに乗り始めたら、若者も農業に関心を持つようになるだろう。

それでも農家になりたくなければ、前述の砂糖など農業銘柄の先物やトラクター会社、肥料会社の株を買えばいいだろう。あるいは農産物関連の商品ETFも購入可能だ。

ニュージーランドなどは、農業が盛んなので長期的には投資対象として魅力的だと思っている。

ジム・ロジャーズ(Jim Rogers)
投資家

ロジャーズホールディングス会長。1942年、米国生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。73年にクォンタム・ファンドを設立し、ヘッジファンドという手法にて莫大な資金を運用して財を成した。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。『大転換の時代』(プレジデント社)、『世界大異変』(東洋経済新報社)など著書多数。