「メルケル」は現夫ではなく元夫の苗字

日本のような「家」の考え方がないドイツでは、離婚後も元夫の姓を名乗り続け再婚後も元夫の姓のままという女性もおり、ドイツのメルケル首相がそれに該当します。「メルケル」は元夫の姓で、現在の夫の姓とは異なります。

筆者の知人には「ドイツにはあまりないエキゾチックな苗字がいい」という理由から、日本人の妻と離婚後も日本語の苗字を名乗り続けているドイツ人男性もいます。

前述通り2013年以降は夫婦別姓が基本となっているドイツですが、夫婦が「互いに同じ苗字にしよう」と決める場合も、「苗字の響きやイメージ」を基準に「どちらを名乗るか」を決めることが珍しくありません。「ドイツによくある苗字」であるならば、人違いなどを防ぐために、「よりレアな苗字のほう」が選ばれる傾向にあります。「男性の苗字を選ぶのが当たり前」という時代ではなくなってきているのです。

夫婦が同じ姓を名乗ることを「一つの選択肢」とせず、強制しているのは世界で日本だけです。「選択的夫婦別姓」ではその名の通り、選択肢が増える「だけ」です。それ以上でもそれ以下でもありません。世界がひっくり返るわけでもなんでもありません。選択的夫婦別姓の反対派にはそのことを肝に銘じてほしいものです。

サンドラ・ヘフェリン(Sandra Haefelin)
著述家・コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)、『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)など。新刊に『ドイツの女性はヒールを履かない~無理しない、ストレスから自由になる生き方』(自由国民社)がある。 ホームページ「ハーフを考えよう!