二律背反なトレンドがやってくる!
新しいトレンドである「隠れメイク男子」や「HIPHOPワナビープロダクト」と、一見古臭い過去に見える「おじフード」や「創作レトロ」。
楽に「インスタ映え」を狙う「0.5手間」と、一見これまでのインスタ映えと相反するように見える「インパクト映え」。秘密を他人と共有したい「オープンシークレット」と既存の友達と仲を深めたい「逆自慢」。
これらの例が示すように、2021年は一見全く逆のトレンドが同時に流行る、という現象が起こると次世代研では予想しています。
一見、矛盾しているように見えるトレンドの数々ですが、若者の頭の中ではまったく矛盾していません。
たとえば「おじフード」。餃子のようなおじさんの食べ物であっても、お店自身がお洒落になっているから若者にも受け入れられるのです。「創作レトロ」もただ古臭いだけではなく、あくまで今のZ世代が「お洒落と感じるレトロ」を取り入れているから成り立ちます。
また「インパクト映え」も、これまでのお洒落でゴージャスなインスタ映えに飽きてきたから生まれた手法。
「オープンシークレット」もSNSで友達とつながりすぎる関係になったからこそ、本当の秘密は他人と共有したほうが、居心地が良くなっているわけで、「逆自慢」もコロナで友達と距離ができたからこそ「絆の確認」がしたくなっているだけです。
このように、2021年の「二律背反」トレンドですが、新旧それぞれの良いとこ取りをしながら、Z世代の若者たちが新しいトレンドを生み出すために頭を絞った結果、一見、矛盾しているように見えるのです。
ぜひ、彼らの知恵の結晶である一見矛盾した「温故知新」にご注目いただければと思います。
構成=辻村 洋子
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。