安堵する父、うなだれる母

2015年の国勢調査のデータを見ると、日本では20~40代の未婚男性の6割以上が、親や祖父母なども含めた親族と同居しています。50代になると1人暮らしをする未婚男性が増えてきます。この年代になってようやく、親の他界や施設入居などによって、慣れない一人暮らしを始める様子が垣間見えます。

ちなみに同じデータでは、20~40代の未婚女性の約7割が親や親族と同居しています。「どっちもどっちだ! 女性だって!」と言いたくなるかもしれませんが、そもそも未婚の割合(+人口数)が男女で異なります。20代後半以降、男性は女性の未婚割合を大きく超え始めます。女性はそもそもの未婚者の母数が年齢とともに男性よりも大きく減少していく一方となります。

イギリスやドイツ、アメリカなどほかの先進諸国では、独身者の3割以上が親と同居しているという統計結果が新聞等で公開されると、「そこまで若者が貧困なのか」と若年層の貧困問題ととらえられて、喫緊の政策課題として経済政策の検討などがなされます。

しかし、日本では貧困というより「むしろその方がうちの子も楽だろうし」といった親の価値観から同居を続けさせる傾向が強く、親との同居そのものが経済的前提条件によるものかはさておき、それが価値観的にはあまり問題になりません。ただ、この親との同居は結婚市場では、男女とも選ばれるためには不利な条件となっているのです。

結婚に関するデータ講演を行うと、30歳過ぎの独身の子を持つ親御さんから「息子の婚活のために何をしたら良いでしょうか」と質問を受けることがあります。特にお母様には、「とりあえず実家から出してください。かわいそうなどといって、ご飯を作ってあげたり、かいがいしく彼の部屋を掃除したりと、初老女性が成人男性の世話を焼くようなことはやめましょう」とお伝えしています。

講演でこうした話をすると、父親とみられる参加者は安堵したように会場を後にします。おそらく、未婚の息子が同居し続けていることを、以前から問題だと思っていたような様子です。一方、できるだけ長く息子を手元に置いておきたい母親とみられる参加者は、暗い顔で帰って行く様子が見受けられます。「先生、ひとごとじゃなかった、うちの話でした」と苦笑して退出した結婚支援員さんまでいらっしゃいました。

過保護すぎる母親にはならないで

息子さんがいる読者の方には、息子さんにとって過保護にならないように、早いうちから自立をうながしてほしいと思います。

恵まれすぎた環境が当然となると、息子さんは結婚のメリットを感じることが難しくなってしまい、親元から自立しようという意欲を失っていきます。ゆくゆくは年老いた私の介護を……といった淡い期待をお持ちの方もいるかもしれませんが、自分の身の回りの世話でさえ過保護に甘やかされて育った息子さんが、果たしてあなたの介護をしてくれるものでしょうか。私自身、10年以上に及ぶ介護経験者ですが、介護は心身ともに厳しく、そんなに甘いものではありません。