超少子化社会を迎えた日本。ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子さんは、統計データを正しく読み解くことで、誤った思い込みをなくし、真の課題に向き合う必要があると説きます――。
冬の晴れた日に洗濯物を干すシニア女性
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少子化は女性の社会進出のせいではない

日本は「少子化」と言われ続けて30年近く経ち、1993年以降は合計特殊出生率が常に1.5未満の超少子化社会となりました。少子化が進んだ理由として、「女性の学歴が高くなったから」「女性が働くようになったから」「結婚しても子どもはいらないと考える人が多い」など、あたかも女性の社会進出が原因のように誤解されることが多いですが、これは誤りです。

まずは日本の出生数に関係するデータを丁寧に見ていきましょう。統計を見ると、日本の場合は結婚を伴わない出産は2%と非常に少なく、結婚と出産が深く結びついています。

初婚同士の夫婦が結婚して15年から19年経過して最終的にもつ子どもの数の平均(完結出生児数と呼ばれます)は、30年以上もの間「約2人」です。一方、出生率(合計特殊出生率)は、生まれた子どもの数を分子に、未婚・既婚を問わず15~49歳の女性全ての数を分母に算出します(詳しい計算方法は省略します)から、分母の未婚者の割合が増えれば下がります。つまり、日本の出生率の低下の原因は「1組あたりの夫婦が持つ子どもの数が減ったため」(そこは約2人で微減)というよりも、「未婚者割合が増えたこと」(婚姻数大激減)にあるわけです。

出生率の低下の大きな原因は「未婚化」。そして、未婚化は、男性で特に顕著に増加していることは前回の記事(「未婚化の原因は男性にも」婚期を逃していることに気づかない独身男性)でお伝えしました。いくつになっても結婚できると安易に思って結局は未婚化してしまう日本の男性があまりにも多いのです。