アクセルを踏む女性、のんびり構える男性

もう一つ、興味深いグラフ(図表2)を見ていただきましょう。

年齢ゾーン別未婚者の割合
2015年国勢調査結果より天野馨南子さん作成

このグラフ(図表2)から読み取ってほしいポイントは2つあります。

男性も女性も、15~19歳や、20~24歳の「未婚」の割合にはそれほど大きな差がみられません。ところが20代後半(25~29歳)になると、女性が未婚割合の減少で男性に大きく水をあけ始め、未婚者が61.0%となるのに対し、男性は未婚者が72.5%と男女で10ポイント以上差がついています。20代後半で女性は成婚に向けてぐっとアクセルを踏み込んでいる一方、男性はのんびり構えている様子がわかります。

男性の未婚率はこれからも上がる

もう一つ見てほしいのが、先ほどお話しした「生涯未婚率」とも呼ばれていた「50歳時婚歴なし率」に関わる部分です。

50歳時婚歴なし率というのは、実は「45~49歳の未婚率」と「50歳~54歳の未婚率」の平均を取って算出しています。そして図表2からは、「今後、高齢者の未婚率がどうなるか」という予測ができてしまうのです。

このグラフを見て、「男性の45~49歳の未婚率が25.2%で、50~54歳が20.3%、55~59歳が16.1%と、年齢が上がるにつれ未婚率が減っているのだから、年齢が上がればいずれ結婚できるのでは」と考えてしまうかもしれませんが、残念ながらそれは大きな間違いです。

男性の60~64歳の未婚率は13.3%とありますが、この年齢の方々の15年前(50歳時点)の未婚率も、ほぼ同じ数字だったのです。つまり、未婚率は50歳以降そのまま持ち上がってしまうという統計的な傾向がみられるのです。

今年2020年秋に行われた国勢調査の結果では、男性の50歳時婚歴なし率は、2015年の値(24.2%)から増えているでしょう。おそらくこのグラフの40~44歳未婚率の29.3%と45~49歳未婚率の25.5%の間の値、20%台の後半くらいかもしれません。このままの結婚観や結婚に関する男性の行動が変わらない限り、これからも未婚化は進む可能性が高いと思います。

女性は若い頃の希望割合と小さな差

一方、女性の50歳時婚歴なし率はどうでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所が、長年にわたって独身者調査を行っていて、18歳から34歳までの独身者に対し、将来にわたって結婚するつもりがあるかどうかを聞いています。この調査によると、30年以上、男女ともに1割程度、34歳までの若い時点から結婚願望がない人がいることがわかっています。

男性の方は、50歳時婚歴なし率が24.2%ですから、若い時から結婚願望がない男性1割との差の10ポイント以上が「若い頃は結婚したかったけれどもしていないかもしれない人」ともみえます。つまり、50歳時婚歴なし未婚の人の半分以上は、「若い頃の希望とは合致していない未婚者」(全員が若い頃から非婚希望者の持ち上がり未婚者とは限りませんが)といえます。

一方、女性の50歳時婚歴なし率は14.9%です。若い頃から女性の1割がそもそも結婚したくない人だったとすると、その差は4~5ポイント。女性の方は統計上、ほぼ若い頃の結婚希望に近い割合で、50歳時点で結婚していると思っていいでしょう。

私は決して、「結婚すべき」と言っているわけではありません。結婚するかしないか、いつ結婚するか、などの選択は、個人の自由な選択です。しかしデータを見ると、実際は「いつかは結婚したい」という意志を持ちながら未婚のまま50代を迎える人が特に男性において急増しています。そしてその背景には、実は多くのイマドキの結婚に関する「誤った思い込み」があります。それに気付くことで、「結婚したいけれどかなっていない」人が少しでも減ってほしいと願っています。

構成=太田美由紀

天野 馨南子(あまの・かなこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 人口動態シニアリサーチャー

東京大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。1995年日本生命保険相互会社入社、1999年から同社シンクタンクに出向。1児の母。専門分野は人口動態に関する諸問題(特に少子化対策・少子化に関する社会の諸問題)。内閣府少子化関連有識者委員、地方自治体・法人会等の人口関連施策アドバイザーを務める。エビデンスに基づく人口問題(少子化対策・人口動態・女性活躍・ライフデザイン)講演実績多数。著書に『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)等。