現在は海の勢力が優勢。アメリカがまとまれば安泰

もともと地政学では、国境の多くを海に囲まれた「海の勢力」=シーパワーと、ユーラシア大陸にある大陸国家である「陸の勢力」=ランドパワーが争っていると見てきました。歴史を見ると、大きな力を持ったランドパワーの国が、さらなるパワーを求めて海洋へ進出して、シーパワーの国と衝突するという流れを繰り返しています。

海の勢力と陸の勢力の覇権争いはこれからも続く

それでも、ここ500年は、ずっとシーパワーが勝ち続けています。なぜかというと、海を握れば貿易を握ることができて、そこから上がりを得られるからです。ですから、まだまだシーパワーの優位が続くのではないかと予想されます。アメリカが団結すれば、次の70年、80年は安泰でしょうね。

では日本は、どうすればいいか。もっとも重要なのは、海をとられないようにすること。たとえば日本の石油タンカーは、横浜港から中東の産油国に向かい、そこで石油を入れたらマラッカ海峡を通って帰ってくる、というように海の上に石油のパイプラインができています。ですから日本は、そういうパイプラインを奪われないようにすることが非常に重要なのです。

20年ごとの節目で考える「フォースターニング」

最後にポストコロナの時代を予測する手立てとなる「フォースターニング」という視点をご紹介しましょう。フォースターニングとは、歴史は80年周期で循環しているという説。一つ一つの周期は20年ごとに、春夏秋冬という4つの節目で構成されます。

80年周期で世界の組み換えが起こる

第一の節目である春は「高揚」にあたり、その前の危機を乗り越えて新しい社会秩序が生まれる時期です。夏は第二の節目で「覚醒」。春に生まれた世代が既存の社会秩序を攻撃し始めます。第三の節目である秋は「分解」で、春の秩序がくずれ始めて、夏に生まれた新しい価値観が浸透し始めます。冬は第四の節目で「危機」の時期。古い価値観は、すっかり新しい価値観に置き換えられます。

そう考えると、今はまさに冬の時代。2008年頃から始まった冬の時代は、28~30年までに終わって、その間に世界の組み換えが起こるでしょう。

ですから、いちばん苦しいのが今から5~10年間ぐらい。アメリカと中国とのぶつかり合いは、しばらく続きそうですが、28~30年には、決着がついてパッと明るい世の中になるでしょうね。

構成=池田 純子 イラスト=もとき理川 写真=iStock.com

奥山 真司(おくやま・まさし)
地政学・戦略学者

戦略学Ph.D.(Strategic Studies)国際地政学研究所上席研究員。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士に師事。近著に『サクッとわかるビジネス教養 地政学』(新星出版社)がある。