次世代のテクノロジーをめぐり米中戦争は本格化

まずわれわれが現状認識として持っておかなければいけないのは、すでにアメリカと中国の冷戦は始まっているということ。

アメリカが、パワーを増大してきた中国を力で抑え込もうと本腰を入れたのが2016年頃。トランプ政権になる前後です。それを公式に述べたのが、18年にアメリカのシンクタンク、ハドソン研究所で行われたペンス副大統領の演説でした。中国に対して「お前ら、ええ加減にせえよ」と、はっきり言ったことがきっかけで、冷戦に突入しています。

ぶつかり合いのいちばんのテーマは「テクノロジー」です。5Gの機器やインフラを誰が握るのか、その生産は誰が管理するのか、そういった最先端のテクノロジーをめぐる戦いが、2019年からいよいよ本格化しました。

基本的に中国は、2000年代初頭から、それほど騒ぎを起こさずに、ずっと「平和的台頭」というものを実践してきました。しかし、08年のリーマンショックで、西洋のシステムがボロボロとくずれたときに「経済成長を支えるのは実はわが国では?」と気づいてしまった。自分たちはナンバー2で、まだまだアメリカにかなわないと思っていたけれど、これなら超えられるんじゃないかという意識が芽生えてきたんです。それが08年から10年ぐらいの話ですね。

もしかしたら勝てるかも、と傲慢ごうまんになってきたところに、中国国民が「もっといけよ」とけしかけて、平和的台頭を振り払ったのが、10年頃です。19年になると中国は、とにかく攻めに入る態勢で、日本の外務省にあたる外交部に、イデオロギーの強い人間を配置し、外交を強化。アメリカがトランプ政権でバタバタしている今がチャンスだとばかりに、どんどん世界にケンカを売っているという状況になっています。