2020年、オリンピックが開催されていたとしても、リモートワーク化を推し進める起爆剤にはならなかったでしょう。ではなぜ、リモートワーク化が進まなかったかというと、経営者や役員クラスはDX(デジタルトランスフォーメーション)化に乗り遅れることに危機感を抱いており、デジタル化を進めたいと考えるのですが、若手も含めた社員側から反対の声が上がるからです。

デジタルが苦手な年配社員が反対するならわかりますが、デジタルネイティブ世代(1980年前後以降生まれ/40代前半まで)も反対しているというのは意外ですよね。社員側は余計な仕事が増える、これまで頑張ってきた仕事がなくなるなど、DX化によって起きうる変化を危惧して反対しているのです。

ちなみに、DXとは、「デジタル技術を活用し、従来のやり方を抜本的に変革すること」。概念的でわかりにくいかもしれませんが、システムや制度が社会全体にとって、最適なものへと変貌していくことです。単なるサービスのデジタル化ではなく、DXは世の中の仕組みを変え、企業文化までも変えていくでしょう。

もちろん、今まで必要とされていた仕事が将来的になくなることはあるでしょう。でも、新たな仕事も生まれてくるので、決して、仕事が増えるとか、仕事がなくなることを意味しているわけではありません。でも、見えない未来に危機感を抱いてしまう気持ちもわからなくはありません。

そんな人にこそ伝えたいのは「みなさんは、すでにデジタル化の波に乗っていますよ」ということ。スマホを使ってアマゾンで買い物をし、通勤電車の遅延情報を得、メルカリで不要品を処分する……毎日の生活の中でデジタルサービスを利用していますよね。コロナ禍でデジタルサービスは一層進化しました。便利な世の中になりましたよね。

今や生活の中にデジタルはすっかり浸透しています。30年前だったら想像もできなかった世界。この便利なシステムを手放せますか? 一般的に企業内でのデジタル化よりも一般消費社会のほうが、デジタルネイティブに合わせたビジネスやサービスがどんどん増えています。一般向けのサービスなので、使い勝手の良さが第一に考えられており、特別な知識なしに使いこなせます。もはや、デジタル化の流れに乗るしかないのです。

アフターコロナでは出社ベースに戻る企業も

コロナ禍に後押しされてスタートしたリモートワークですが、早くから取り組んでいた企業は別にして、短期間で準備した企業でさえも十分に機能していますよね。経営者も社員層もこの結果に正直驚いていることでしょう。デジタル化は決してハードルの高いものではありませんし、使いこなすために高いスキルが必要なわけでもありません。そして、使ってみると、「意外に便利だよね」となるわけです。スマホに入っているアプリと同じ感覚。リモートワークにはメリットもあれば、デメリットもありますし、マネジメントや人事評価をどうするかといった問題など新たに見えてきた課題もありますが、それはリモート化が定着していく過程で改善されるでしょう。