SNSと同レベルに重要な「母親の後押し」
若きZ世代の男子は、総じて美意識が高い。反面、「その美意識を、購買にまでつなげるためには、越えなければならないハードルがいくつかある」と、市川さん。
その1つが「価格」であり、「最後のひと押し」。この2つに関係してくるのが、先の「母親」だといいます。
たとえば、マーケティングには「ファネル(漏斗)」という考え方があります。【図表1】のように、まず「商品一覧」を見た人を「100%」と置くと、その次の「詳細」まで進むのは全体の8割、そこから「カート」に入れるのは、多く見積もっても2割で、さらに「購入」まで進むのは1割いるかいないか……、とのニュアンスです。
その過程で、ふるいにかけられた顧客は、漏斗(ファネル)で濾すように脱落していってしまう。
でも逆に言えば、途中で何らかの形で受け止めてくれる存在がいれば、漏斗で濾されることなく「購入」まで至ると考えられるでしょう。
その受け止め役こそが、「買ってあげるわよ」と名乗り出てくれるような、あるいは「これ、いいんじゃない?」と口コミしてくれるような「母親」ではないかと、市川さん。今後は、SNSだけでなく「母親から息子につながるような、口コミの仕掛けも考えていきたい」とのこと。
多くが、従来とはまったく違った美意識やコンプレックスを「標準装備」している、Z世代の男子。だからこそ、そこに新たなビジネスチャンスも眠っていると言えそうです。
立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。