ポジティブな言葉が痛みに耐える能力を上げる

疲れやストレスが溜まってくると、ついついイライラしてネガティブな言葉を発したくなりますが、「ポジティブな言葉を使っていると、痛みや調子の悪さへの耐性が高まる」という南デンマーク大学の研究があるのです。

研究を行ったヴェイグターらは、83人の被験者に対して3つの説明文を読んでもらいました。

①「ポジティブな言葉による説明文」
②「ネガティブな言葉による説明文」
③「中立的な説明文」

それぞれを読んでもらったうえで、被験者にスクワット運動をしてもらったところ、①の説明文を読んだケースは大腿筋の耐性が22パーセントもアップし、逆に②の説明文を読んだケースでは4パーセントもダウンし、痛覚過敏まで引き起こしたというのです。

ネガティブな言葉を使うと、よりネガティブな気持ちになってしまい、痛みを感じやすくなることが示唆されたのです。

誰もが陥る「ネガティビティ・バイアス」とは?

そもそも人間には「ネガティビティ・バイアス」という認識の傾向があります。

堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)
堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

つまり、ポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に注意を向けてしまいがちな性質があるのです。

また、ネガティブな情報ほど記憶に残りやすいという傾向もあります。

それを示す好例がスワースモア大学のアッシュが行った実験です。

彼は、被験者たちに、とある人物を評価するために、以下のようなことばをリストとして見せました。

【リストA】知的な 器用な 勤勉な 温かい 決断力がある 実践的な 注意深い
【リストB】知的な 器用な 勤勉な 冷たい 決断力がある 実践的な 注意深い

リストAとリストBの違いは「温かい」と「冷たい」だけです。

しかし、「温かい」を含むリストAを見せられた90人は、その人物を「優しい」「社交的」「面白い」という具合に相対的に高く評価したのに対し、「冷たい」を含むリストBを見せられた76人は、全体的に低く評価したのです。

たったひと言のネガティブな言葉が、大きく印象を変える力をもっているというわけです。

ネガティブな言葉があなたの評価を低くさせる

ネガティブな言葉は、人の注意を引いてしまいます。ですから、たった1つでもネガティブな言葉を使ってしまうと、発したあなたへの評価も低くなってしまう可能性があるのです。

一方、ポジティブな言葉にはやる気や体力さえも向上させる力があります。ですから、他者へはもちろん、自分自身に対しても、ポジティブな言葉を投げかけるように努めてください。

堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学法学部教授

1968年、熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程、ヨーク大学ロースクール修士課程修了、同博士課程単位取得満期退学。言語学博士。立命館大学准教授、明治大学准教授などを経て、2010年より現職。専門は司法におけるコミュニケーション分析。脳科学、言語学、法学、社会心理学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。『科学的に元気が出る方法集めました』(文響社)など著書多数。コメンテーターとしても活躍中で、メディア出演も多い。