忘年会を思いとどまらせる説得法

では、どうすれば昭和のオジサンたちに忘年会の開催を思いとどまらせることができるのか、最後に考えてみたいと思います。

まずもって大切なのは、あくまでも「オジサンたちのため」という態度を崩さないこと。「自分がやりたくない」というのではなく、「オジサンたちにとっても、そのほうが利益になる」という点を強く協調するのです。

「万一、コロナになったりすると、糖尿病の持病がある人は、重症化しやすいそうですから」
「年配者ほど、コロナのリスクが大きくなるという話を聞くので、重役の人たちが心配なんです……」

このような形で説得されるのであれば、いくらお酒が飲みたいオジサンたちでも、「私たちのことを気遣ってくれているのだな」ということを感じて、さらに無理強いしてくることはないと思います。

大切なのは、「相手のため」ということを強調してあげること。

ドイツにあるトリーア大学のローマン・トロッシェルは、模擬的な交渉実験を行ってみたことがあるのですが、自分のことばかり考えるのではなく、相手の立場も考慮してあげたほうが、結局は、うまく交渉をまとめることができることを明らかにしています。

相手の立場で物事を考えることは、人を動かす上で非常に大切な態度とスタンス。昭和のオジサンを説得するときにも、このルールを守ってください。きっと忘年会の開催を思いとどまらせることができると思いますよ。

<参考>
・Armeli, S., Carney, M. A., Tennen, H., Affleck, G., & O’Neil, T. P. 2000 Stress and alcohol use: A daily process examination of the stressor-vulnerability model. Journal of Personality and Social Psychology ,78, 979-994.
・Begue, L., Bushman, B. J., Zerhouni, O., Subra, B., & Ourabah, M. 2013 Beauty is in the eye of the beerholder: People who think they are drunk also think they are attractive. British Journal of Psychology ,104, 225-234.
・Troschel, R., Huffmeier, J., Loschelder, D. D., Schwartz, K., & Gollwitzer, P. M. 2011 Perspective taking as a means to overcome motivational barriers in negotiations: When putting oneself into the opponent’s shoes helps to walk toward agreements. Journal of Personality and Social Psychology ,101, 771-790.

内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。