2021年1月、アメリカ初の女性副大統領が誕生する。ここで思い起こされるのは、2016年に女性として初めて米大統領選を戦ったヒラリー・クリントンだ。次期副大統領のカマラ・ハリスとヒラリー・クリントンはどう違うのか、カマラ・ハリスが今後、大統領になる可能性はあるのか。長く現地で米大統領選を追ってきた渡辺由佳里さんが解説する。
予備選中にニューハンプシャー州でスピーチするカマラ・ハリス
撮影=渡辺由佳里
予備選中にニューハンプシャー州でスピーチするカマラ・ハリス

2016年の“トランプショック”

2016年の大統領選挙では、多くの大手メディアがヒラリー・クリントンの勝利を予測していた。実際にヒラリー(ビル・クリントンと識別するために、ここではヒラリーと表記する)は投票数では対立候補のドナルド・トランプより300万票も多く獲得し、これは、大統領候補としてアメリカ史上最高記録だった。それにもかかわらず、アメリカ独自の「選挙人制度」によってヒラリーは敗北した。これは、ヒラリー個人だけではなく、「初めての女性大統領の誕生」を夢見ていた高齢女性たちにとって大きな打撃だった。

アメリカの憲法に婦人参政権を認める改正(憲法修正第19条)が批准されたのは1920年8月のことで、そう昔のことではない。2016年の大統領選挙では、母親が参政権を得るために戦った世代の高齢女性たちが「自分の生きている間に、女性が大統領になるという歴史的な瞬間を体験したい」とヒラリーに票を投じるニュースをよく見かけた。ゆえに、仕事で実力を示してきた女性候補が「スターだったら何でもやらせてくれる。女性器をわしづかみにすることもできる」と発言した男性候補に敗北したのは、何重にもショックなことだった。彼女たちにとっては、女性として差別され、抑圧されてきた自分たちの人生から希望を奪い取る出来事でもあったのだ。

「女性大統領のほうが国にとって良いと思う」と語ってくれた銃規制を求める父と娘のペア
撮影=渡辺由佳里
「女性大統領のほうが国にとって良いと思う」と語ってくれた銃規制を求める父と娘のペア