制度導入だけでは、夫婦間のアンバランスは解消しない可能性

以上のとおり、コロナ禍で、在宅勤務制度の適用が拡大したほか、意識の変化もともなって、家事・育児の時間が増加した男性は多い。場所と時間にとらわれない働き方を導入することで、仕事と家庭の両立に効果がある可能性が感じられる。これは、男性にとっても女性にとっても、そして子どもたちにとっても、期待できる点だろう。

ただし、注意したいのは、男性の家事・育児時間は、新型コロナウイルス流行前と比べて増えた世帯はあったが、女性の家事・育児時間が増えた世帯のほうが多かったということだ。

普段、家事・育児をしている人が、その時間や量を増やすより、普段していない人が、新たにその時間を作るほうが難しい、あるいは普段していない人が、やるべきことを思いつくことができない(=見えない家事が見えない)可能性があるとすれば、今後、在宅勤務等テレワーク制度を導入するだけでは、夫婦間の家事・育児と仕事の時間のアンバランスは解消しない懸念がある。

恒久的な制度の導入と、夫婦間の役割再考を

コロナ禍での在宅勤務活用で、男性の家事・育児時間が増えた割合が低かった理由として、1つは、その働き方がいつまで続くか明確でなかったことが挙げられる。未知の感染症であり、外出自粛を目的として、特例的に在宅勤務を導入・利用拡大せざるを得なかった企業もあると思われるため、仕方がなかった部分もあるだろう。しかし、仮に、特例的な働き方だとしても、いつまで続けるか、制度利用のルールをどうするか等が明確になっていれば、少なくとも在宅勤務の日における家庭内の役割分担を家族で計画ができたと思われる。

もう1つは、残念ながら、やはり夫婦間の役割分担意識の問題と、これまでに家事・育児に費やした時間の差だろう。普段から家事・育児をやっていないと、いざ時間があっても何をやったらいいのかがわからないという可能性がある。これは在宅勤務制度だけではなく、現在検討されている男性の育休義務化の制度にといても課題となってくるだろう。解消に向けては、家庭内でのそれぞれの役割を、これまでの延長ではなく、新たな働き方を踏まえて、再考することが必要だと思われる。

村松 容子(むらまつ・ようこ)
ニッセイ基礎研究所保険研究部 准主任研究員

2003年ニッセイ基礎研究所入社。専門は健康・医療分野におけるデータ分析。国が公表する各種統計等を使って、傷病の発生動向や治療動向を調査研究している。現在は、傷病の発生動向や健康に対する考え方の男女の違いや地域による違いに注目している。