通勤時間の減少やテレワークへの切り替えといった「働き方」が大きく変化した人は、女性よりも男性に多いことが分かった。一方で、家族の在宅時間の伸びに伴って家事・育児時間が増えたのは働く妻のほう——。ニッセイ基礎研究所の村松容子さんは、「在宅勤務などの制度を導入するだけでは、男女のアンバランスは解消されない」と指摘する。夫の在宅時間が伸びても、家事・育児時間の伸びが鈍い理由とは。
寝室を掃除するシニアのカップル
写真=iStock.com/Blue Planet Studio
※写真はイメージです

通勤時間が減った分が家事・育児に向くわけではない

新型コロナウイルスの感染拡大の抑止策として、今年(2020年)2月、厚生労働省は企業に対して、テレワークや時差通勤の積極的な活用の促進などの取り組みへの協力を要請した。3月には、全国の小中高校も臨時休校となり、これまで在宅勤務制度を適用されていなかった人でも、特例的に自宅での業務時間が増えた。

近年、働き方改革で「場所と時間にとらわれない働き方」を推進する動きがあるが、今回の新型コロナウイルス感染拡大による在宅勤務の導入で見えてきたことは、働く「場所」と「時間」の確保が難しいということだ。

特に、共稼ぎ世帯においては、夫婦でオンライン会議の時間が重なると、会議参加の場所が確保できない、子どもがいる世帯においては、子どもが会議に入ってきてしまう等、いかに「場所」を確保するかという課題がみえた。また、今回紹介するように、夫の出勤が減っても、あいた通勤時間や業務の合間の時間が必ずしも家事や育児に向くわけではない。家族の在宅時間が多くなり、「時間」の確保がこれまで以上に難しくなった働く妻も多かったようだ。

ここでは、今回のコロナ禍における在宅勤務中の家事・育児分担状況を紹介し、今後の働き方の見直しの中で企業や各世帯で気を付けるべき点について考えたい。

働き方は、男性のほうが変わっていた

ニッセイ基礎研究所が実施した「第1回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」を使って、高校生以下の子どもをもつ共働き世帯のうち、新型コロナウイルス流行前と労働時間が変わらない(または増加した)人の働き方と時間の使い方の変化を男女別に紹介しよう。

この調査を実施したのは6月末で、4月の1回目の流行の後、やや新規陽性者が減っていたものの、外出自粛が続いており、就労者は日々の出勤だけでなく、出張や外食、買い物等もなるべく控えていた頃である。子どもも同様で、多くの地域で、すでに登校は再開されていたが、感染リスクを下げるため、日数や時間を制限したイレギュラーな登校が続いており、流行前と比べると自宅にいる時間が長かった。

この頃の働き方の変化を流行前の1月頃と比べると、移動時間に男女差はほとんどなかったが、勤務先への出社が減った人や、在宅勤務等のテレワークが増えた人は、女性よりも男性に多かった。

1月頃と比べて、出勤状況が変化した割合