一人で歩いているときもマスクをする人

たいていのルールには、「本質的な目的」があるわけですが、ルールを守ることが目的になると、本来の目的を忘れてしまいます。

たとえば感染症対策にはマスクの着用が必要ですが、外を一人で歩いていてもマスクをしているというのはその最たるものです。密でもないししゃべらないですから、飛沫など起こりようがありません。なのにマスクをする意味はまったくないでしょう。

つまりこういう人は、思考停止しているか、アリバイ作りのポーズにすぎないことがわかります。

たとえば道を歩いていて目の前の信号が赤に変わりました。左右を見渡しても、車の影はどこにも見えません。

ここで律儀に足を止めるのが、思考停止した人にありがちな傾向です。もちろんこれは誰でもわかりやすいたとえとして使っているだけであって、信号を無視しろというわけではありません。思考停止から脱却するには、ルールの捉え方を変えよう、ということです。

街中でスマホを使用するゴキゲンな女性
写真=iStock.com/recep-bg
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道路交通法の第七条では、「歩行者は信号機に従わなければならない」、と定めています。では、その道路交通法は何のためにあるかというと、その第一条に「危険を防止し」「交通の安全と円滑を図り」「交通に起因する障害を防止するため」とあります。

であれば、上記のように道路における安全が阻害されず、交通の秩序が乱されない場合に、横断歩道を渡っても問題ないと判断することが可能です。実際に赤信号で渡れということではなく、ルールの本質を考えることが大切だということです。

ルールを疑うところからイノベーションは生まれる

これを「赤信号を渡るのはルール違反だ」と思い込んでいる人にはできません。

彼らは「そもそもなぜそのルールがあるのか」と、原点に立ち返って考えることはないので、機械的に「ルールは守るのが当然」と思い込み、ルールを守ることが目的になります。

しかし、ルールは社会を保つ最大公約数で作られているので、現実にそぐわない場面も出てくるものです。

技術の進化や時代の変化などによって昔のルールが現実にそぐわない、あるいはイノベーションの邪魔になることもあります。そこで、「そのルールの本質は何か?」「この場面ではルールのほうがおかしいんじゃないか?」という発想をしてみることです。

ビジネスでの典型的な例は物流事業のルールを変えたヤマト運輸です。ルールそのものを疑い、何が本当に人の役に立つのかを考え、「荷物を運ぶのは郵便局しかやってはいけない」という法律はむしろ国民のメリットとはならないという結論に達しました。そして、後年には法律をも変えてしまうブレークスルーが生まれてきたのです。

単純に「法律は守らなきゃいけない」と捉えている人には、宅配便事業というアイデアは永遠に出てこないでしょう。法律の抜け道を探すことを「けしからん」と捉えている人には、発泡酒も第三のビールも思いつくことはない。ブレークスルーは、ルールを破るブレイカーから生まれてくることもあるのです。