なぜプロは結局インデックス運用に勝てないのか

『敗者のゲーム』
敗者のゲーム
チャールズ・エリス著、鹿毛雄二訳●日本経済新聞出版社

運用のプロであっても市場平均に連動する株価指数のインデックス運用には勝てないことを教えている本で、インデックス運用の一般向け解説書としては『ウォール街のランダム・ウォーカー』と双璧をなす。「プロの情報量や能力はすごいのだが、市場平均には勝てない」というストーリーで、皮肉の効いた味わいがある。結論部分に異議はないが、個人的には「プロのすごさ」が強調されすぎているように感じる面もある。

有名経済学者の一般理論は、12章だけを読むべし

『雇用、利子、お金の一般理論』
雇用、利子、お金の一般理論
ジョン・メイナード・ケインズ著、山形浩生訳
●講談社学術文庫

大経済学者ケインズの「一般理論」だ。経済学者にとっても難解とされる本なのだが、投資における「長期の期待(長期の予想形成のこと)」を扱った第12章「だけ」を読むことを、勧めたい。他の箇所はむしろ「読んではいけない」。株式市場に関する有名な美人投票の比喩や、ベンチャー企業におけるアニマル・スピリットの概念などが登場して、何とも面白い。ケインズ自身が投資の熱心な実践者だったので文章が生きている。

なぜインデックス投資をすると会社から自由になれるのか

『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』
父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え
ジェイエル・コリンズ著、小野一郎訳●ダイヤモンド社

「会社から自由になるためのお金を早くつくりなさい」と父親が娘に具体的な方法を教える。かいつまんで言うと、手取り所得の50%で暮らして、50%を投資に振り向けて、金融資産額の4%で暮らせるようになりなさい、という教えだ。所得一定、リターンゼロだと25年掛かる計算になるが、全額をインデックス運用に振り向けると、もっと短期間で達成できるはずだと説く。なぜそうするのかと、具体的なファンド名は本を読んでほしい。

ノーベル賞受賞学者が教える行動経済学の王道

『ファスト&スロー』上
ファスト&スロー』上・下
ダニエル・カーネマン著、村井章子訳●ハヤカワ文庫

ノーベル経済学賞を受賞した認知心理学・行動経済学者のダニエル・カーネマンが書いた、心理学・経済学の一般向け解説書。人がどのように意思決定を行い、そして間違えるのかをわかりやすく説明している。行動経済学の本は、どれを読んでも似た実例が出てきて少々飽きがくるので、余計な本を読まずに、「本家」であるカーネマン自らが書いた本書を読んでおくことをお勧めしたい。

撮影=小林久井(近藤スタジオ)

山崎 元(やまさき・はじめ)
経済評論家

専門は資産運用。楽天証券経済研究所客員研究員。マイベンチマーク代表取締役。1958年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。以降、野村投信ほか12回の転職を経て、現職。『山崎先生、将来、お金に困らない方法を教えてください!』(プレジデント社)など著書多数。