経済書に知的刺激を求める人にお薦め

RADICAL MARKETS 脱・私有財産の世紀
エリック・A・ポズナー/E・グレン・ワイル著、安田洋祐監訳、遠藤真美訳
●東洋経済新報社

例えば、著者たちは、財産の私有権がある種の独占の弊害を持つことを指摘し、財産の私有権を制限したうえで、最も有効に資産を利用できる者が資産を使える独創的な取引ルールと税金の仕組みを提示する。マーケットメカニズムの利用には、財産の私有権と自由な取引のセットで成り立つ資本主義がベストだとの先入観を持ちがちだが、「まだ甘い」のだ。読むのに頭を使う本だが、経済書に知的刺激を求める人はぜひチャレンジしてほしい。

AIと雇用など今日的なテーマをわかりやすく論考

21 Lessons
ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳●河出書房新社

AIと雇用の関係など、今日的なテーマを21個選んで『サピエンス全史』『ホモ・デウス』で有名な歴史学者・哲学者の著者が、論考を展開する。例えばAIは労働者を搾取するのではなく存在意義を奪うので共産主義は解決にならない。クリアな議論なので、筋道を追いやすく、刺激になる。時にユーモアや皮肉がある。この本のいいところは、索引と参考文献が充実していることだ。参考文献は、新しい本や論文に出合う手掛かりになる。

バフェットの右腕と呼ばれる男の含蓄ある言葉

マンガーの投資術
デビッド・クラーク著、林 康史監訳、石川由美子訳●日経BP社

世界一有名な投資家はウォーレン・バフェット氏だろう。世の中には多くの「バフェット本」があってマネー本の一ジャンルをなしているが、実はバフェットには「バフェットの右腕にして、左脳」とも呼ぶべき7歳年上のチャーリー・マンガーという頭脳明晰(めいせき)で勝ち気なビジネスパートナーがいる。本書はマンガー氏の言葉をコレクションした本で、投資と人生とバフェットのあれこれがわかる含蓄のある言葉が収録されている。

本気でトレードに勝ちたいと思う人は必読

『天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す』上
天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す
上・下
エドワード・O・ソープ著、望月 衛訳●ダイヤモンド社

ソープ氏はブラックジャックの必勝法「カード・カウンティング」の考案で有名だが、実は「ブラック=ショールズ・モデル」もフィッシャー・ブラックより早く導いていた。しかし、論文で有名になることよりも、ヘッジファンドの運用に応用することを選んだ。おそらくはジョン・フォン・ノイマン級の数学の天才頭脳を、ギャンブルと投資の実践にささげた「ギャンブルの聖者」の自伝だ。トレードやギャンブルでもうけようと思う人の必読書。本気ならこのレベルを目指せ。