「空き家を放置すると、さまざまなリスクが発生します」と野澤さん。主なリスクをまとめると、図のようになる。

住まない実家を放置するとどんなリスクがある?

多くの人が誤解しているのは「相続放棄すれば、実家を受け継ぐ必要はない」という考え方だ。

「相続放棄しても空家等対策の推進に関する特別措置法第3条の『管理者』に該当するので、管理義務を問われる可能性があります」

空き家が荒廃して近隣に迷惑をかけるような事態になった場合、相続放棄した人に管理責任が生じる可能性があるというのだ。具体的にどんな管理責任が生じるかは、まだ事例がなく最終的には裁判で判断されることになるが、相続放棄では解決しないことは理解しておきたい。

さまざまなコストもかかる。固定資産税や維持費・修繕費が定期的にかかるほか、最近は台風などの被害も多くなっており、豪雨や暴風で屋根や外壁が壊れてしまえば、まとまった修繕費も必要になる。

「固定資産税に庭木の剪定せんていなどの費用、偶発的な修繕費まで合わせると年間10万~30万円のコストがかかるのを覚悟したほうがいいですね」

空き家になってから一定期間が過ぎてしまうと、建物が傷んでそのままでは貸すことも売却することも難しくなってしまうという。その場合には、解体してから売却をしなければならない。それでも放置を続けると、自治体が強制撤去に踏み切り、解体費用を請求されることもある。

空き家管理にかかる費用(月額)/自治体が強制撤去した空き家(全国)

5年を超えて放置すると、空き家の活用は難しい

親から引き継いだ実家がお荷物にならないようにするには、住まいにも終活が必要。いつからどんな準備をしておけばいいのか。

「空き家問題をフェーズに分けると、遅くともフェーズ2までに方針を固めておく必要があります」

フェーズ2とは、リフォームをすれば活用できる段階で、空き家になってから長くても5年まで。それを過ぎると、解体が必要になる可能性が高いという。理想は親が元気なうちに、実家の処分に必要な前提条件を整えておくこと。祖父母の家が空き家になっている場合は、その話から始めるのもいいだろう。まず確認したいのは土地や建物の「名義」と「土地の境界」。過去の相続で登記簿の名義を変更していない場合や、隣家との境界がはっきりしていない場合は売却が難しい。

空き家問題のフェーズ
最初に確認すべき2つのこと/まずは祖父母の空き家からチェック