勤務時間中に自宅ワークスペースを掃除してもいいのか

また、在宅ワーク中の家事などの負担を軽減することはできないのだろうか。家事で大変な作業の1つが掃除である。できれば勤務時間中に自宅のワークスペースの掃除をしたいが、それは許されるのかもちろん直接の指示・命令者である直属上司に「掃除をしたいのですが、いいですか」と聞けば、OKしてくれるかもしれない。あるいは上司の中には「そんなことは勤務時間以外にやれ!」と言う人もいるだろう。

では許可されなければ勤務時間中に掃除はできないのか。じつはそんなことはない。前出の厚労省のテレワークガイドラインには「テレワークを行う作業場が、自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)、労働安全衛生規則及び『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン』の衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましい」と記載している。

つまりここに記載した規則などを守ることは当然であり、さらに使用者がそのことを社員に伝えるようにと指導しているのだ。

大掃除は6カ月に1回行うのが会社の業務

そしてここに出てくる「事務所衛生基準規則」の第15条に「清掃等の実施」を設け、事業者が行う措置を義務づけている。その第一項で「日常行う清掃のほか、大掃除を、6月以内ごとに1回、定期に統一的に行うこと」と明記している。

通常のオフィスでは使用者が外部の清掃業者に委託して清掃をしてもらうのが一般的だが、在宅では社員自身がやることになる。しかもその掃除は本来会社がやるべきことであるが、規則の趣旨からすれば、社員が会社業務を代行するという理屈になる。

つまり、勤務時間中に自宅ワークスペースの掃除をすることは当然許されることになる。しかし、このことを上司はもちろん、知らない企業も多いだろう。

もし上司に「掃除なんか、勤務時間外にやれ!」と言われたら、「法律では掃除は会社のやるべきこととなっていますよ。何だったら、業者を呼んで清掃してもらい、その代金を会社に請求するように言いますが、それでもよいですか」と言っても何も問題はないのである。

在宅ワークでの負担を減らすための法律やルールは一定程度整備されている。これを使って快適な仕事の環境を維持するためにも積極的に上司や会社に要求するべきだろう。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。