安岡定子さん
撮影=大沢尚芳

『論語』で組織のベクトル合わせができる

withコロナ、afterコロナの時代に、次のような問題意識や危機感を抱いている経営者の方々がいらっしゃいます。普段はリモート勤務でも構わないが、ひとたび問題が起こったときに、どうやって同じ方向を向いて対処していくのか。難しい問題ですね。

その答えになるかどうかはわりませんが、ある『論語』の勉強会でこんな話をされた方がいました。会社は組織で動いているから、ベクトルを合わせることは大事です。しかし、人によって価値観や経験が異なるので、ベクトルを合わせるのが難しい。たとえば『論語』のように、普遍的で、原理原則を説いていて、長い年月を経て現代まで残ってきた言葉を、みんなが知っていると、考え方が共有でき、ベクトルが同じ方向を向きやすいのではないか、というのです。

このセミナーで紹介しているのは、「故きを温ねて新しきを知る」などたった3つの章句ですが、この3つをみんなが共有しているだけで、組織のベクトル合わせがしやすくなる、と言えそうです。

「心の帰れる場所」を持ちなさい

最後に。

よく誤解されるのですが、孔子の世界観、人間観は、決して難しくありません。道徳家を目指しなさい、ということでもありません。自然を愛で、四季の移ろいにも心を動かし、相手を思いやる気持ちを忘れないこと。人としての道を外れない生き方をすること。これらの大切さを説いているだけです。

祖父の安岡正篤が、生前、「心の帰れる場所」を持つことが大事だと言っていましたが、『論語』に触れるひとときを、「心の帰れる場所」にしていただきたいと思います。

結果を出すためだけに努力する、結果を出せなければ意味がない。そんなことはありません。苦境にあるときこそ、「心の帰れる場所」を持つことが、なによりも大事なのかもしれません。

なお、経営者が『論語』をどう学び、実際にどう役立てているのか。私が講師を務める経営者の『論語』勉強会に参加し、よく学んでいらっしゃるユーグレナの出雲充社長の記事を参考になさってください。

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動画セミナー概要
仕事や人生において、苦境や逆境に立たされたときに、どうすればいいのか。
その参考になるのが、中国古典の名著、孔子の言行録『論語』です。
ビジネスにも人生にも役立つ珠玉の章句(言葉)を選んで、わかりやすく解説しています。
動画再生時間:約60分
視聴料:5000円(繰り返しご覧いただけます)
講師プロフィール
安岡 定子(やすおか・さだこ)氏
安岡定子事務所代表。公益財団法人 郷学研修所・安岡正篤記念館理事長。二松学舎大学文学部中国文学科卒業。漢学者・安岡正篤氏の孫。論語教育の第一人者として知られ、「こども論語塾」の講師として全国各地で講座を開催するほか、企業やビジネスマン向けのセミナー、講演活動を行っている。『実践・論語塾』(ポプラ社)、『子や孫に読み聞かせたい論語』(幻冬舎)、『はじめての論語』(講談社)など著書多数。
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(構成=PRESIDENT経営者カレッジ 編集チーム)