コロナ前から深刻だった「子どもの貧困」

しかし、ひとり親世帯の状況は、新型コロナウイルスの蔓延で初めて厳しくなったわけではありません。

自治体が過去に行った、小中学生の保護者を対象に行った子どもの生活実態調査では、半年の間に電気・ガス・水道などが止められたことがあるのは、大阪府で約2%(2016年)、沖縄県で3%以上(2018年)という結果が出ています。つまり、大阪では1学年に1、2人、沖縄ではクラスに1人の子どもがライフラインを止められた経験があったというわけです。

われわれを含む貧困の研究者や支援に携わる人たちは、何年も前から「公共料金や家賃に対する支援策が必要だ」と政治家や一般市民、マスコミに対して強く訴えてきました。電気、ガス、水道などが止められると、命に関わるからです。しかしこれまで、ほとんど反響はありませんでした。

セーフティーネットの弱さが露呈した日本

リーマンショック以後、「低所得者に対する対策が必要」という認識は少しずつ広がっています。また、子どもの貧困対策としての教育に関する費用軽減などについては、ここ数年で徐々に進められてきましたが、貧困対策全体として見ると、まだまだ進んでいるとは言えません。

欧米の先進国では、「平時」からライフラインとなる公共料金を補助する制度や、家賃補助の制度が整っている国も多いのですが、日本ではいまだに、低所得者層の住宅保障や公共料金の補助などがないままです。

さらに、日本の生活保護受給者の人口に対する割合は、ほかの先進諸国に比べても非常に低く、人口の1.6%にとどまります(2019年)。ドイツでは9.7%、フランスでは5.7%に上り、アメリカでは食費扶助を受ける人の割合は15%と、日本に比べて非常に高い。これは、日本に貧しい人が少ないということでは決してなく、支給条件が非常に厳しく申請が受理されにくいことや、生活保護受給者に対するバッシングもあり受給をためらう人が多いことが影響していると思われます。

「平時」から、生活保護の支給要件を緩和し、困っている人をしっかり支える仕組み、つまりセーフティーネットを作っておけば、新型コロナウイルスの感染拡大などの「緊急時」に慌てなくとも、必要な人が救われるはずでした。「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことは、日本国憲法において規定されている国民の権利なのですから。